研究所トップ研究成果情報平成24年度

水田内にノビエが多いと斑点米が増加するが、その影響範囲は局所的である

[要約]

稲出穂期が8月上旬で、水田内のノビエ穂数が8月中旬以降に増加する条件下では、8月下旬のノビエ穂数が多いほどアカスジカスミカメによる斑点米被害が増加する。ノビエ密生地が周囲に及ぼす影響範囲は90cm程度で、距離に応じて斑点米混入率は減少する。

[キーワード]

ノビエ穂数、斑点米、アカスジカスミカメ

[担当]

秋田農試・生産環境部・病害虫担当

[代表連絡先]

電話018-881-3330

[区分]

東北農業・生産環境(病害虫)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

近年、東北地方において、アカスジカスミカメの発生量が増加傾向にある。本種は水田内でノビエが繁茂するとそれらの雑草に産卵し、斑点米被害が助長される。

そこで、8月中旬以降にノビエ穂数が増加する条件下において本種の効率的な防除方法を開発するための基礎的知見を得るため、水田内におけるノビエ密度と斑点米混入率の関係と影響範囲について検討を行う。

[成果の内容・特徴]

  1. 水田内のノビエ穂数が8月中旬以降に増加する条件下において、8月下旬のノビエ穂数と斑点米混入率の間には有意な正の相関が認められ(図1)、ノビエ穂数の増加に伴い側部加害主体(2011年:88.7%、2012年:96.7%)の斑点米が増加する。
  2. ノビエ密生地(10株/平方メートル区)枠内から30、90cm離れた地点の斑点米混入率は、0株/平方メートル区に比べてそれぞれ3.35倍、1.08倍高く、距離に応じて斑点米混入率が低下する。また、150cm離れた地点の斑点米混入率は、0株/平方メートル区に比べて0.89倍であり密生地の影響はないと推察される(表1)。
  3. 30、90cm地点の斑点米混入率は、ノビエ密生地(10株/平方メートル区)に比べてそれぞれ30.1%、77.4%減少する(表1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 供試品種は「あきたこまち」で、出穂期は2012年8月4日、2011年8月2日であった。ノビエはタイヌビエが主体であった。
  2. 水田内に100cm×100cm×35cm高(うち約10cm土壌中に埋没)の枠を設置した。枠内には除草剤を散布してノビエ以外の除草を行いノビエのみを発生させたが、自然発生が少なかった区については6月上旬にノビエを移植し、7月下旬のノビエ株密度0、1、5、10株/平方メートルに調整した。各区の枠間は2011、2012年それぞれ9m、4m離して設置した。枠外の水田全体にも除草剤を散布し、イネ科雑草とカヤツリグサ科雑草を排除した。斑点米カメムシ類防除は行わなかった。
  3. 試験圃場の7月中旬の畦畔におけるすくい取り調査(10回振り)において,アカスジカスミカメ成虫とカスミカメムシ類幼虫が多く確認された(図2)。また、8月下旬に実施したノビエ密生地点(10株/平方メートル)枠内でのすくい取り調査(2回振り)において,両年ともアカスジカスミカメ成虫が4頭,カスミカメムシ類幼虫が2頭確認されたことから,斑点米の主要加害種はアカスジカスミカメであると推察された。
  4. 水田内のノビエ穂数が8月中旬以降に増加した条件下である(図3)。

[具体的データ]

( 秋田県農業試験場)

[その他]

研究課題名
人と環境に優しい新たな秋田米生産技術体系の確立
予算区分
県単
研究期間
2008〜2012 年度
研究担当者
高橋良知、菊池英樹