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大豆の安定生産のための土壌pH改良効果

[要約]

大豆圃場の土壌pHを適正に改良すると、主茎節数、分枝数の増加によって総節数が増加し、その結果、収量が3〜4割向上する。また、カキ殻を安価な石灰資材として代替することにより、資材コストを3割に抑えつつ収量の増加が図られ、酸性矯正の効果は2年間継続する。

[キーワード]

石灰資材、pH改良、大豆、カキ殻

[担当]

岩手県農業研究センター・環境部・生産環境研究室

[代表連絡先]

電話0197-68-4422

[区分]

東北農業・生産環境(土壌肥料)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

本県の大豆作は、低収が課題となっており、その要因のひとつとして、石灰資材の施用不足による土壌pHの低下が挙げられている。一方、pHの改良による大豆の収量や収量構成要素の変化については知見が少ないことから、土壌pHの改良効果を明らかにし、現地指導の資とする。

また、水産資源の有効活用として、安価で持続的な効果が期待できるカキ殻による土壌pH改良効果について、併せて検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 土壌pHの低い大豆圃場(pH5.0)を苦土炭カルにより好適pH(6.0〜6.5)に改良することにより、開花期の生育が良好となり、成熟期には主茎節数および分枝数が2割程度増加する(表2)。それに伴い総節数が3〜4割増加し、その結果、平方メートル当り着莢数および平方メートル当り着粒数、百粒重が大きくなり、大豆収量は約4割増加する(表3)。
  2. 水産資源の有効活用による安価な石灰資材として、カキ殻は、炭カル通気法で算出した炭カル現物施用量の2倍相当量を施用することにより、好適pHに改良できる(図1)。カキ殻を利用した土壌pHの改良により、主茎節数および分枝数が増加し、苦土炭カルと同様の効果がみられ、総節数の増加に伴い大豆収量は約3割増加する(表23)。また、カキ殻の資材コストは、苦土炭カルと比較して約3割に低減することができる(表1)。
  3. 苦土炭カルおよびカキ殻のpH改良効果は、施用後2年間は持続する(図1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 石灰資材は、未改良土壌に対し、当該年度のみ作付前に施用とし、1連制で2ヵ年実施した(表1)。
  2. 目標pHまでの改良(pH改良目標値6.0、改良深20cm、仮比重0.8)に要する石灰資材施用量は、苦土炭カルは炭カル通気法により決定し、カキ殻は、平成21年度岩手県農業研究センター試験研究成果書「粗砕カキ殻施用草地における土壌改良効果の持続」に基づき、炭カル施用相当量の2倍量とした。
  3. 本試験研究に供した土壌は非アロフェン質黒ボク土のため、土壌緩衝能が高く、pH改良に要する 施用量は大きくなる。
  4. カキ殻は岩手県山田町産で粒度は3cm未満、平成22年度当時市販されていたものを使用。震災後、同町産のカキ殻は入手困難であるが、同様な品質のカキ殻は、沿岸の他市町村で入手可能。
  5. 試験圃場は排水性等の土壌物理性は比較的良好であるが、排水性が不良な圃場でのpH改良による 増収効果は今後の検討が必要である。
  6. 石灰資材の施用3年目以降のpH改良効果は未検討である。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
転作大豆栽培における効率的なpH 管理技術の確立
予算区分
県単
研究期間
2010〜2012 年度
研究担当者
大友英嗣