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黒毛和種における生理食塩水を溶媒としたFSH1回投与による過剰排卵処理

[要約]

黒毛和種において20AUのFSHを10または50mlの生理食塩水に溶解し、頸部皮下へ1回投与するだけで減量投与法と同様な過剰排卵誘起が可能である。本手法は、低コストで省力的であり、家畜に対するストレスも軽減できる。

[キーワード]

過剰排卵処理、FSH1回投与、黒毛和種

[担当]

青森県産業技術センター畜産研究所・繁殖技術肉牛部

[代表連絡先]

電話0175-64-2233

[区分]

東北農業・畜産

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

牛の過剰排卵処理には、一般に卵胞刺激ホルモン(FSH)が利用されるが、FSHは半減期が短いことから朝と夕の1日に2回、3〜4日間減量しながら筋肉内に投与する減量投与法により行われている。しかし、FSHによる減量投与法は投与回数が多く煩雑なうえ、家畜に対するストレスも大きいことから、より省力的な手法の開発が求められている。そこで、毒性や副作用がなく、また物質としての安定性が高く、かつ低コストである溶媒を用い、1回のFSH投与による過剰排卵処理方法を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. FSHの投与は、PRID(膣内挿入型プロジェステロン・安息香酸エストラジオール配合剤)挿入(挿入日は、発情および発情直後を避ける)後4日目のドナーに頸部皮下へ1回のみ投与する(図1)。
  2. 20または30AUのFSHを、10または50mlの生理食塩水に溶解し頸部皮下へ1回投与すると、いずれの条件においても減量投与と同様に過剰排卵誘起が可能である(表1)。
  3. FSH投与後の血中のFSH濃度の推移は、FSHの投与量30AUの場合、溶媒量10mlでは減量投与に比べ高く、50mlでは同等に推移する。低コストに結びつく20AUのFSHでは、溶媒量を50mlとすることで、血中のFSH濃度は減量投与法より低下することなく推移する(図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 生理食塩水のみを溶媒としているため、実施する上で特に制約が無く、かつ毒性や副作用がない。
  2. 本手法は黒毛和種について効果が認められているものであり、他品種での効果は不明である。

[具体的データ]

( 平泉真吾)

[その他]

研究課題名
効率的ウシ胚生産方法の検討
予算区分
県単
研究期間
2010 年度
研究担当者
平泉真吾、西本凡子(青森畜研)、西宮弘(秋田畜試)、及川俊徳(宮城畜試)、坂上信忠(神奈川畜技所)、西野治(奈良畜技セ)、佐野文彦(静岡畜研)、倉原貴美(大分農水研指畜産)橋谷田豊(家畜改良セ)、長谷川喜久(北里大学)
発表論文等
Hiraizumi S. et al. (2011) Reprod. Fertile. Dev. 23:256