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サイレージ用トウモロコシ連作圃場における窒素及びリン酸肥料の削減
[要約]
牛糞堆肥を連用したサイレージ用トウモロコシの連作圃場では、土壌中の可給態窒素や有効態リン酸含量が増加し、施肥による増収効果が低下するため、基肥施用量を削減することが可能である。
[キーワード]
サイレージ用トウモロコシ、牛糞堆肥、可給態窒素、有効態リン酸、減肥
[担当]
(地独)青森県産業技術センター畜産研究所・酪農飼料環境部
[代表連絡先]
電話0175-64-2791
[区分]
東北農業・畜産
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
サイレージ用トウモロコシは牛糞堆肥と化学肥料を組み合わせた施肥管理が行われているが、土壌養分の多寡に関わらず窒素及びリン酸肥料を一定量施肥する方法が慣行となっている。一方、近年環境に配慮した農業への関心が高まり、過剰な施肥による環境汚染が問題視されている。そこで、土壌養分とトウモロコシ収量との関係を調査し、収量を確保するための最小限の施肥量を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 牛糞堆肥(以下、堆肥と記す)を毎年4〜8t/10a施用する圃場では、トウモロコシに対する窒素の施肥効果が経年的に鈍化し、多肥区に対して有意に減収する施肥量は徐々に少なくなる傾向を示す。これは、堆肥施用量が多いほど顕著である(表1)。
- 土壌の可給態窒素は堆肥の増施または連年施用によって増加するが、窒素増施による影響は認められない。また、堆肥及び窒素施肥量の違いが、翌春の土壌中無機態窒素含量に及ぼす影響は小さい(表1)。
- トウモロコシの窒素施肥反応と可給態窒素+無機態窒素の合計量との間には密接な関係が認められ、これらの土壌窒素量が増加すると窒素施肥量を減らすことが可能となる(図1)。
- トウモロコシのリン酸に対する施肥反応は、有効態リン酸(トルオーグリン酸)含量が低い新規作付圃場では10kg/10aまで顕著に認められる。一方、有効態リン酸含量が5mg/100gを超える連作圃場では、リン酸施肥による増収効果が小さくなるため、施肥量を減らすことが可能となる(表2)。
- 有効態リン酸含量は、リン酸20kg/10aまでの施肥では変動が小さいが、堆肥を増施または連用すると高まる(表2)。
- トウモロコシ連作圃場において堆肥を4t/10a施用すれば、窒素及びリン酸施肥量を10kg/10aから5kg/10aに半減しても収量は減少しない(図2)。
[成果の活用面・留意点]
- サイレージ用トウモロコシ栽培において、施肥量を削減した管理技術の参考となる。
- 普通黒ボク土における成果であり、全窒素0.3〜0.4%、炭素5〜6%、リン酸吸収係数2,300程度の土壌である。
- 連作圃場は2009年時点でサイレージ用トウモロコシの連作7年目である。
- 施用した堆肥は水分69〜80%(平均73%)、現物中に窒素0.37〜0.56%(平均0.45%)リン酸0.21〜0.26%(平均0.24%)を含有し、炭素率は約20である。堆肥は全面散布し、ロータリーハローで15cm深に混和した。
- 連作により地力が十分に高まった場合でも、播種後の低温による生育障害のリスクを回避するためには、少量の施肥が必要である。
- 青森県におけるトウモロコシへの現行の施肥基準は、堆肥の施用歴や施用量に応じて、窒素が6〜15kg/10a、リン酸が10〜15kg/10aである。
[具体的データ]




( 青森県産業技術センター畜産研究所)
[その他]
- 研究課題名
- 堆肥の肥効特性を考慮したトウモロコシの減化学肥料栽培技術の確立
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2009〜2012 年度
- 研究担当者
- 村田憲昭、芦田倫子
- 発表論文等
- 芦田ら(2012)東北農業研究、65:(印刷中)