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カリウム等施肥による放射性セシウムの牧草への移行抑制

[要約]

暫定許容値を上回る牧草地に塩化カリウム等を土壌表面に施肥したところ、未更新草地及び更新草地において無処理区に比べ、牧草中の放射性セシウム濃度が低減する傾向が見られる。

[キーワード]

放射性セシウム、交換性カリウム、牧草、移行抑制

[担当]

宮城県畜産試験場・草地飼料部

[代表連絡先]

電話0229-72-3101

[区分]

東北農業・畜産

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響を踏まえ、県内各地のモニタリング調査の結果、県内の牧草で暫定許容値(100Bq/kg・水分80%補正)を超える放射性セシウム(以下RCs)が検出された。 宮城県ではプラウ等による耕起・草地更新による除染を推進しているが、耕起等が困難な草地を念頭に、施肥による土壌から牧草へのRCs 抑制効果について検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 原発事故以降未耕起の宮城県内の公共牧場(A牧場)の草地(褐色森林土、オーチャードグラス主体)で早春にカリウム(塩化カリ)または窒素(尿素)を表面に施肥すると(以降追肥なし)、各番草収穫時の牧草中のRCs 濃度が無処理区に比べ低減し、特にカリウム施肥区で低減する。(図1表1
  2. A牧場(褐色森林土)において、平成24 年春に草地更新しても暫定許容値(100Bq/kg・水分80%補正)を1〜2番草で超過していた春播きイタリアンライグラスの草地に、3番草再生中にカリウム(塩化カリ)を施肥すると、3番草収穫時の牧草中のRCs 濃度で低下する傾向が見られる。(図2表2

[成果の活用面・留意点]

  1. 施肥前に土壌診断により土壌理化学性を分析し、交換性カリウム等の濃度を適正水準に施肥すること。
  2. カリウム等の施肥だけでは十分にRCs が低下しない場合があり、除染については関係機関の指導をうけ、牧草のRCs 濃度が暫定許容値を下回っていることを確認のうえ、家畜へ給与すること。
  3. 草地更新後に暫定許容値超過ほ場については,土壌中の交換性カリウム濃度等の土壌理化学性のほかに耕起深度,近隣未更新草地の牧草や雑木林の落ち葉等異物の混入などの複数の要因が考えられるので、当該圃場の要因を分析のうえ対応策を講ずること。

[具体的データ]

(宮城県畜産試験場)

[その他]

研究課題名
牧草における放射性物質の移行軽減技術に係る試験
予算区分
県単
研究期間
2012〜2014 年度
研究担当者
荒木利幸、小野寺伸也、伊藤裕之、石川知浩、中鉢正信