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和牛繁殖雌牛の尿中放射性セシウム濃度の推移

[要約]

放射性Csを含む飼料を給与すると尿中137Csは数日間で急激に上昇し、その後は飼料中の137Cs濃度を反映し推移する。放射性Csを含む飼料の給与を中断すると、尿中137Csは中断直後の数日間と中断後43〜128日目の期間で異なる半減期で減少する。

[キーワード]

肉用牛、尿中放射性セシウム濃度、生物学的半減期

[担当]

福島県農業総合センター畜産研究所・肉畜科

[代表連絡先]

電話024-593-1223

[区分]

東北農業・畜産

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

血液中放射性セシウム(以下、「放射性Cs」という。)濃度は、筋肉中放射性Cs濃度と正の相関があるが、血液中放射性Cs濃度は筋肉中のそれより20〜30分の1と低く、清浄な飼料で飼い直しを行うと、血液中放射性Cs濃度は急激に低下する(2011年)。牛肉の規制値が100Bq/kgに設定されたことから、血液よりも放射性Cs濃度の高い尿を用いて筋肉中放射性Cs濃度の推定を試みる。本調査はその一環として、137Csを含む飼料の給与・給与中止によって尿中137Csがどのように推移するかを確認する。

[成果の内容・特徴]

  1. 清浄飼料を摂取している牛に137Csを含む牧草を給与すると、尿中137Csは給与開始後急激に上昇し、個体差はあるものの9日目の測定で最初のピークを示し、その後は飼料中137Csの濃度を反映し推移する(図1)。
  2. 137Csを含む飼料の給与を停止すると、血液及び尿中137Csは給与停止後の数日間で大きく減少し、その後、徐々に減少速度は緩やかになる。給与停止後に137Csが検出限界値を下回るまで減少するのに要する時間は、より濃度の高い尿が血液よりも長いことから、清浄飼料による飼い直しを行った牛の体内汚染度を調査するサンプルとしては、血液より尿の方が適している(図2)。
  3. 尿中137Cs は、放射性Csを含む飼料の給与を停止後間もない期間(0〜9日目まで)と給与停止44日目以降の期間で、異なる生物学的半減期で減少する(表1)。
  4. 尿中137Csの推移は、2つの指数関数の和で近似することができる(図3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 放射性Csを含む飼料を摂取した履歴がある肉用牛の出荷可否の判断材料としての活用が期待される。
  2. 随時尿(任意の時間に採取した尿)で測定するため、極端に薄い(水分が多い)尿はサンプルとして採用しないようにすること。

[具体的データ]

( 福島県)

[その他]

研究課題名
肉用牛における放射性セシウムの体内動態
予算区分
県単
研究期間
2012 年度
研究担当者
内田守譜,石川雄治,古閑文哉,高瀬つぎ子(福島大),大槻勤(東北大)