研究所トップ研究成果情報平成24年度

比重で補正した尿と筋肉の放射性セシウム濃度は高い正の相関関係にある

[要約]

尿中放射性Csの濃度を尿の比重が一定となるよう補正すると、筋肉中放射性Cs濃度と高い正の相関関係がある。

[キーワード]

肉用牛、筋肉中放射性セシウム濃度、尿中放射性セシウム濃度、尿比重

[担当]

福島県農業総合センター畜産研究所・肉畜科

[代表連絡先]

電話024-593-1223

[区分]

東北農業・畜産

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

血液中放射性セシウム(以下、「放射性Cs」という。)濃度は、筋肉中放射性Cs濃度と正の相関があるが、血液中放射性Cs濃度は筋肉中のそれより20〜30分の1と低く、清浄な飼料で飼い直しを行うと、血液中放射性Cs濃度は急激に低下する(2011年)。牛肉の規制値が100Bq/kgに設定されたことから、血液よりも放射性Cs濃度の高い尿を用いて筋肉中放射性Cs濃度の推定を試みるため、継続的に放射性Csを含む飼料を摂取している牛について尿及び筋肉中放射性Cs濃度の関係を調べる。

[成果の内容・特徴]

  1. 放射性Csは筋肉、尿、血液の順に高く、筋肉は尿の6.3倍、血液の28.3倍である(表1)。
  2. 尿の比重は1.002〜1.037とばらつきが大きく、放射性Cs濃度の筋肉/尿の比はばらついている。これを、尿中放射性Cs濃度を尿の比重が1.020となるよう補正(以下、「尿(比重補正)」と記載)することにより、筋肉との濃度の比のばらつきを小さくすることができる(表1)。
  3. 筋肉中放射性Cs濃度は尿(比重補正)の約3倍で、両者は高い正の相関関係にある。このことから、継続的に放射性Csを含む飼料を摂取している牛の尿中放射性Cs濃度と尿の比重から、筋肉中放射性Cs濃度を推定できる。また、尿(比重補正)の放射性Cs濃度は血液よりも約9倍高く、比重補正した尿中放射性Cs濃度と筋肉中放射性Cs濃度との相関(相関係数0.96)は、血液と筋肉の相関(相関係数0.94)と同等である(図1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. さらに低濃度での相関関係を調査することにより、肉用牛の出荷可否の判断材料としての活用が期待される。
  2. 本調査は警戒区域内で野草等を自由採食している牛から得たデータである。

[具体的データ]

( 福島県)

[その他]

研究課題名
肉用牛における放射性セシウムの体内動態
予算区分
県単
研究期間
2012 年度
研究担当者
内田守譜,石川雄治,古閑文哉,高瀬つぎ子(福島大),大槻勤(東北大)