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放射性セシウムを含む飼料米を摂取した肉用鶏(地鶏)における移行状態

[要約]

放射性核種を含む籾米を混合した飼料(幼雛期:56Bq/kgDW、育成期:113Bq/kgDW)を地鶏に不断給餌した結果、筋肉中には50Bq/kgFWを超える放射性セシウムの蓄積は確認されなかった。

[キーワード]

地鶏、放射性セシウム、飼料用籾米

[担当]

福島県農業総合センター畜産研究所・養鶏分場

[代表連絡先]

電話024-932-1678

[区分]

東北農業・畜産

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

通常肉鶏用の配合飼料にはトウモロコシが43〜55%含まれる。昨今のトウモロコシ等輸入穀物の高騰を背景に、飼料自給率の向上が喫緊の課題であり、飼料用籾米を鶏の飼料中のトウモロコシと代替給与する技術が注目されている。しかし、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、福島県内では放射性セシウム(以下、放射性Cs)の拡散が生じ、農産物についても広い範囲で放射性Csの蓄積が見られた。そこで、県内で生産された放射性Csを含んだ籾米を飼料中のトウモロコシと100%代替し、地鶏に給与した場合の鶏肉等への放射性Csの移行状態を検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. 給与飼料中の放射性Cs濃度は幼雛期飼料(1〜4週齢)で56Bq/kgDW、育成期飼料(5〜17週齢)で113Bq/kgDWである(表1)。
  2. 筋肉中には50Bq/kgFWを超える放射性Csの蓄積は認められない。また、肝臓の放射性Cs濃度は検出限界値以下で、筋胃では16.1Bq/kgFW移行する(表2)。
  3. モモ肉とムネ肉の放射性Cs濃度の比較では、12週齢までではムネ肉で高く、17週齢ではモモ肉が高い値を示し、筋肉の部位別の発達時期の違いによるものと推察される(表2図1)。
  4. CR(Concentration Ratio:濃度比)は週齢の経過と共に減少し、体重に対する飼料の摂取量が多い幼雛期においてより蓄積しやすいと推察できる(図1)。
    CR=筋肉中の放射性Cs濃度(Bq/kgFW)/飼料中の放射性Cs濃度(Bq/kgDW)で表される。

[成果の活用面・留意点]

  1. 2013年1月現在、鶏肉(一般食品)における放射性物質の基準値は100Bq/kgで、家きん用飼料の暫定許容値は160Bq/kgとされている。
  2. 汚染された飼料用籾米は市場に出回ることは無いものの、今回の試験成果から、家きん用飼料の暫定許容値である160Bq/kgを下回る籾米を原料として使用した場合、100%代替飼料は原料籾米の放射性Cs濃度の1/3〜半分程度になると考えられるため、実際調製される飼料の濃度は今回の試験に用いた育成期の飼料中の放射性セシウム濃度(113Bq/kg)を下回り、本試験同様に鶏肉(一般食品)の基準値100Bq/kgを超えることは無いと推察できる。

[具体的データ]

(福島県)

[その他]

研究課題名
放射性物質の吸収量の把握
予算区分
委託プロ(国産飼料プロ5系)
研究期間
2012年度
研究担当者
宮野英喜、佐藤茂次