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水稲有機栽培における機械除草を中心とした多年生雑草も除草可能な除草体系

[要約]

水稲有機栽培では、プラウによる秋の反転耕、間隔をあけた2回代かき、枕地ならし機構付き田植機、株間除草機を組み合わせることによって、一年生雑草、多年生雑草の発生量を抑制し、減収を防ぐことができる。除草コストは有機慣行体系より低下する。

[キーワード]

水稲有機栽培、プラウ耕、固定式タイン型除草機、2回代かき

[担当]

岩手県農業研究センター・プロジェクト推進室

[代表連絡先]

電話0197-68-4412

[区分]

東北農業・稲(稲栽培)、東北農業・農業生産基盤(作業技術)

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

水稲有機栽培においては、雑草対策が最大の課題であり、様々な除草技術が取り入れられているが、安定的な除草技術は確立されていない。作業効率の良い株間除草機が市販されているが、雑草発生量の多い圃場では、効果が不十分な場合があり、雑草害により大きく減収することがある。そこで、雑草多発圃場において複数の耕種的防除を組み合わせた除草体系を確立する。

[成果の内容・特徴]

  1. 栽培前年秋に水田プラウによる反転耕を行う。耕起深は耕盤層上部(約15cm程度)までとし、極端な深耕は行わない。秋の反転耕は、冬期間の暴露による塊茎凍結により塊茎発生のシズイ、クログワイの発生量を抑制し、2〜3年継続して実施することで、多年生雑草の発生量が減少する(図1図2)。
  2. 越冬後、ロータリー耕を実施した後に、荒代かきと植代かきの間隔を2〜4週間程度あけた2回代かきを行う。移植には枕地ならし機構付きの田植機を使用し、枕地ならし機構を圃場全面に処理する。機械除草は株間除草が可能な除草機(固定式タイン型除草機等)を使用し、移植7〜10日後に1回目、以降1週間間隔で3〜4回除草する(図1)。
  3. この体系により、一年生雑草、多年生雑草の発生量を抑制し、雑草害による減収を防ぐことができる(表1)。
  4. 現地で行われている歩行型中耕除草機を使用した除草体系(有機栽培の慣行除草体系)に比べ、機械費が増加するものの、労働費が減少し、除草作業のコストが低下する(表2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 普及対象 有機栽培米の生産を行う経営体
  2. 普及予定地域 東北太平洋側地域
  3. その他
    1. 2回代かきの1回目は各地域の通水に合わせて早めに行い、2回目までの間隔を長くとって雑草を発生させるようにする。
    2. 本試験は、コナギ、シズイ、クログワイが多発する有機栽培3〜11年目の圃場(厚層腐植質多湿黒ボク土:土壌情報閲覧システム)で行い、機械除草には、固定式タイン型除草機を使用した。
    3. 有機JAS認証を取得する場合は、導入する技術の適用の可否を認証団体に確認すること。

[具体的データ]

( 岩手県農業研究センター)

[その他]

研究課題名
代かき同時移植と除草機を用いた水田雑草防除技術の開発
予算区分
委託プロ(気候変動B3系)
研究期間
2009〜2012 年
研究担当者
臼井智彦、高橋昭喜、藤田智美、寺田道一、扇良明、多田勝郎、細川健