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農地の空間線量率および土壌硬度に及ぼす反転耕の効果

[要約]

プラウによる反転耕を実施すると反転耕実施前と比べ空間線量率は大きく低減する。反転耕後に縦軸回転式駆動ハロー、続いてレーザーレベラーを実施すると地表面下0〜15cmの円錐貫入抵抗値は水田においてトラクタによるロータリ耕うんが容易な値となる。

[キーワード]

プラウ、反転耕、空間線量率、円錐貫入抵抗値

[担当]

福島県農業総合センター・企画経営部・経営・農作業科

[代表連絡先]

電話024-958-1700

[区分]

東北農業・農業生産基盤(作業技術)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

プラウによる反転耕は、放射性セシウムを多く含む(放射性セシウムで汚染された)表層の土を下層にすき込む技術であり、排土を出さずに農地の空間線量率を低減し、土壌表層の放射性セシウム濃度を低下させるとともに作物への放射性セシウムの移行を低減できる可能性がある。そのプラウによる反転耕を福島県内の水田と畑で実施し、空間線量率および土壌硬度に及ぼす反転耕の効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 今回試験に用いたプラウは、表層土の反転効果を高めるために新たに開発された二段耕プラウやジョインタ付きプラウである(写真1)。
  2. プラウによる反転耕と縦軸回転式駆動ハローによる整地を実施し、空間線量率を反転耕実施前と比較すると水田で約4〜7割、畑で約5〜9割低減する(表1)。
  3. 耕起済みの場合には、空間線量率の低減効果が小さくなる傾向があるが、水田においては、水田用二段耕プラウの方が、ジョインタ付きプラウより空間線量率の低減率が大きい傾向がある。また、畑では耕深45cmが耕深30cmと比較し、空間線量率は大きく低減する傾向がある(表1)。
  4. 反転耕後に縦軸回転式駆動ハローによる整地を実施すると、地表面下0〜15cmの円錐貫入抵抗値は、水田においてトラクタによるロータリ耕うんが可能な目安値である300〜500kPaとなるが、続いてレーザーレベラーによる均平を実施すると、地表面下0〜15cmの円錐貫入抵抗値は、ロータリ耕うんが容易な目安値である500kPa以上となり、値が大きくなる(図1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 反転耕を行う前に下層土に礫層がないか等の事前の確認が必要である。
  2. 反転耕実施後の水田では、下層に埋却した汚染土を上層に掻き上げるおそれがあるため、無代かきで田植えを行う。
  3. 土壌診断に基づき交換性カリ等の施肥を行う。
  4. 農地の除染用として新たに開発された二段耕プラウやジョインタ付きプラウの活用を前提に、除染の具体的な手順をはじめ、空間線量率の低減や反転耕を実施できる条件等について詳しく解説している冊子(「除染用反転耕プラウの開発とその利用」)が中央農業総合研究センターより公表され、ホームページよりダウンロードが可能である。 (http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/tech-pamph/043445.html
  5. 反転耕を行ったプラウは、スガノ農機(株)より除染対応プラウとして市販されている。

[具体的データ]

( 福島県)

[その他]

研究課題名
プラウによる反転耕のすき込み精度の向上と影響評価
予算区分
実用技術
研究期間
2011 年〜2012 年
研究担当者
大野光(福島農総セ)、青田聡(福島農総セ)、松葉隆幸(福島県農村振興課)、松澤保(福島県畜産課)、渡邊好昭(中央農研)、藤森新作(農研機構本部)、後藤隆志(生研センター)、小澤良夫(スガノ農機)、渡邉勇人(ヰセキ東北)