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果実の洗浄および加工と放射性セシウム濃度

[要約]

2012年に福島県内で収穫した果実の洗浄前後では、放射性セシウム濃度に差は認められない。また、放射性セシウムを含む農産物を加工する場合、シロップ漬けや水煮などでは放射性セシウムが流出して加工品の濃度は低くなるが、乾燥や濃縮を伴う加工では濃度が高くなる。

[キーワード]

放射性セシウム、果実、表面洗浄、加工、動態

[担当]

福島農総セ・流通加工科

[代表連絡先]

電話024-958-1719

[区分]

東北農業・農業生産基盤(流通加工)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

現在、食品に含まれる放射性物質については農産物のモニタリング検査や加工品の放射性物質検査が行われており、基準値を超える食品は流通していない。しかし、加工による放射性物質の挙動は不明な点が多いことから、今後の加工品製造の際の参考データとするため、本試験では放射性セシウムを含む果実を加工した場合の放射性セシウムの挙動を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 放射性セシウムを含むウメ、イチジク、ブドウ、ユズ、リンゴの各果実の洗浄前後では放射性セシウム濃度に変化は認められなかった。このことから、本試験で用いた果実5種(各3点)の果実表面への放射性セシウムの付着は無かったと推察される(表1)。
  2. 梅塩水漬け、イチジクシロップ漬け、マロングラッセでは外部のシロップ等に、マーマレードや栗渋皮煮では加工過程の水煮によって放射性セシウムが流出し、加工品の放射性セシウム濃度は減少する(表2,表3)。
  3. 梅干し、干しぶどうでは水分の減少によって放射性セシウムは濃縮し、放射性セシウム濃度は上昇する(表2,表3)。
  4. 梅酒、梅シロップ、ユズ酒の加工では、原料から浸出する果汁とともに放射性セシウムが酒やシロップへ移行する(表2,表3)。
  5. ウメのジャム加工では、加工時に水分が蒸発して放射性セシウムは濃縮されるが、ショ糖の添加量が水分蒸発量を上回るため、加工後の放射性セシウム濃度は減少する(表2,表3)。
  6. 梅漬けや甘露煮の加工では、漬け汁や煮汁に放射性セシウムが流出するが、果実の重量も減少して放射性セシウムが濃縮されるため、加工後の放射性セシウム濃度は変わらないか、やや上昇する場合がある(表2,表3)。
  7. ウメとブドウのジュース加工では、果汁と搾汁残さの放射性セシウム濃度は等しく、ジュースの放射性セシウム濃度は原料と変わらない(表2,表3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 果実加工時の放射性セシウム濃度の変化が予測できる。

[具体的データ]

(福島県)

[その他]

研究課題名
農産物における放射性物質の除去技術の開発
予算区分
県単
研究期間
2011〜2012 年度
研究担当者
関澤春仁、山下慎司、丹治克男