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いもち病抵抗性“極強”の水稲新品種候補「東北糯199号」の育成

[要約]

東北中南部では晩生の早の糯種で、「もちむすめ」より稈長がやや長く、千粒重は大きく、収量は同程度、いもち病抵抗性は“極強” 、耐冷性は“極強”、耐倒伏性は“やや強”である。玄米及び白米の白度が高く、餅は良食味であり、硬化性が低い。

[キーワード]

イネ、東北糯199号、耐冷性、いもち病抵抗性、硬化性

[担当]

宮城県古川農業試験場・作物育種部

[代表連絡先]

電話0229-26-5105

[区分]

東北農業・稲(稲品種)

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

宮城県では、約2,000haの糯品種が作付けされており、その90%以上で「こがねもち」が栽培されている。「こがねもち」は、餅の食味に優れ、硬化性が高く、加工適性にも優れていることから、「みやこがねもち」の名で宮城県を代表する糯品種として普及している。しかしながら、長稈で耐倒伏性が劣り、穂発芽しやすく、耐冷性やいもち病に弱いことから、糯米の安定生産を図る上で栽培特性の改良が課題となっている。そのため、2003年に耐冷性が強く、耐倒伏性に優れる「もちむすめ」を育成したが、近年の気象変動の中、期待した程の高品質が維持できず、作付けが減少している。そこで、「もちむすめ」より栽培特性に優れる良質良食味の糯品種を育成する。

[成果の内容・特徴]

  1. 晩生の耐病性に優れる、良食味の水稲糯品種の育成を目標に、「東北糯175号(もちむすめ)」を母、いもち病抵抗性“極強”の「東北糯161号」を父として、2002年に交配し、その後代を選抜、固定を図ってきた系統である(表1)。
  2. 出穂期、成熟期ともに、「もちむすめ」、「こがねもち」より1日遅いか、同じで、東北中南部では、晩生の早である(表1)。
  3. 稈長は「もちむすめ」よりやや長く、「こがねもち」より短い。穂長は「もちむすめ」、「こがねもち」よりやや長く、穂数は「もちむすめ」、「こがねもち」と同程度からやや少なく、草型は偏穂重型である。耐倒伏性は“やや強”で「もちむすめ」にやや優る(表1
  4. 玄米収量は「もちむすめ」並で、「こがねもち」より劣る。玄米千粒重は「もちむすめ」、「こがねもち」より大きい(表1)。
  5. 耐冷性は“極強”、穂発芽性は“中”、白葉枯病抵抗性は“やや弱”である(表1)。
  6. いもち病真性抵抗性遺伝子型は“+”と推定され、葉いもち病圃場抵抗性及び穂いもち圃場抵抗性は“極強”である(表12)。
  7. 玄米及び白米の白度は「もちむすめ」よりやや高く、玄米品質は「もちむすめ」、「こがねもち」並で“上下”である。餅の食味は「もちむすめ」、「こがねもち」並の“上中”であり(表1)、硬化性が低い(表3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 普及対象:宮城県内生産者、餅加工業者等
  2. 普及予定地域・普及予定面積: 宮城県西部丘陵及び北部・南部平坦地に200ha
  3. その他: なし

[具体的データ]

( 宮城県古川農業試験場)

[その他]

研究課題名
水稲新品種の開発、耐冷性といもち病抵抗性を兼ね備えた極良食味及び業務用米品種の開発とその普及
予算区分
指定試験(2002〜10 年度)、県単・実用技術開発事業(2011〜2012 年度)
研究期間
遠藤貴司、佐伯研一、佐藤浩子、酒井球絵、永野邦明、千葉文弥、佐々木都彦、我妻謙介、早坂浩志
研究担当者
平成24 年度宮城県奨励品種採用予定、平成25 年品種登録出願予定