研究所トップ≫研究成果情報≫平成24年度
餅硬化性は尿素溶出澱粉量の吸光度測定により少量で簡易に評価できる
[要約]
餅硬化性と糯米の尿素溶出澱粉量の溶解速度は、25度Cで高い相関がある。溶解速度を利用して、白米20粒を25度C、24時間で溶出した澱粉量の波長530nmの吸光度は、ラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA)と同等の高い精度で餅硬化性を評価できる。
[キーワード]
イネ、糯米、吸光度、溶出澱粉量、餅硬化性
[担当]
秋田農試・作物部
[代表連絡先]
電話 018-881-3330
[区分]
東北農業・稲(稲品種)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
餅硬化性の選抜は初期世代が有効であり(小林ら 2000)、佐藤ら(2005)は少量で簡易に評価できる尿素崩壊法により、溶出澱粉複合体のヨウ素呈色を目視でランクづけし選抜評価の可能性を示している。しかし、佐藤ら(2005)の方法は定性的であり、目的とする検体を評価し選抜するためには精度が良い客観的方法が必要である。そこで、尿素崩壊法における溶出澱粉量から最適条件を見いだす解析を行い、精度が高く少量で簡易な餅硬化性の定量的評価法を確立することをねらいとする。
[成果の内容・特徴]
- 佐藤らの方法を参考にして白米20粒を用いて、4.5 M の尿素溶液中で温度と時間を変えインキュベートすると、溶出澱粉量は時間と温度に依存し増加し各温度区に対する溶解速度は異なる(図1)。
- 硬化性が異なる品種間では、25 度Cにおける溶解速度と餅硬化性との間には高い相関がある(表1)。
- 溶解速度と硬化性との相関が高い25度C、24時間の条件を用いた3年間の検証試験においても、白米の澱粉ヨウ素複合体の吸光度と餅硬化性との間には高い負の相関がある(図2)。
- この方法はサンプル量が少量で簡易であることに加え、精度は餅硬化性と相関が高いRVA法の糊化開始温度および糊化ピーク温度と同等に高い(表2)。
[成果の活用面・留意点]
- 白米20粒に4.5 M 尿素溶液(pH6.0)を20ml加え25 度C・24時間静置した後、溶出澱粉のヨウ素呈色液を希釈倍率10倍にし、アミロペクチンの吸収波長である530nmで測定した吸光度を用いる。
- 本実験に関して粒重、粒形は溶出澱粉量に影響しない。
- 育種の選抜評価に用いる場合は、同一条件下で栽培したサンプル間で行う。
- 著しく登熟温度が高い場合は糯米からの溶出澱粉量が少ないため、吸光度測定時の希釈倍率をやや低くし精度をあげる必要がある。
[具体的データ]




[その他]
- 研究課題名
- 水稲直播用品種と高品質加工用米品種の開発
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2008〜2012 年度
- 研究担当者
- 小玉郁子、川本朋彦、加藤和直、佐藤健介
- 発表論文等
- kodama.I.et al.(2011) 日本食品工学会誌 12(4):157-164