研究所トップ研究成果情報平成24年度

いもち病抵抗性極強の直播向き良食味水稲新品種候補系統「奥羽407号」

[要約]

「奥羽407号」は、寒冷地中部では“中生の晩”に属する粳種である。耐倒伏性が強く、直播栽培に適する。いもち病圃場抵抗性遺伝子Pi39を有し、いもち病圃場抵抗性は“極強”である。玄米品質は“上中”で、食味は「ひとめぼれ」並の良食味である。

[キーワード]

イネ、直播、いもち病抵抗性、良食味、奥羽407号

[担当]

作物開発・利用・水稲品種開発・利用

[代表連絡先]

電話0187-66-2773

[区分]

東北農業・稲(稲育種)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

一般家庭での米の消費量が減少する中で、中食・外食産業向けの業務用米の需要は安定している。低価格であることが要求される業務用米を生産するために、生産者・米卸業者から低コスト栽培が可能な病害抵抗性を備えた直播向き良食味品種が求められている。そこで、いもち病圃場抵抗性を備えた直播向き良食味品種を育成する。

[成果の内容・特徴]

  1. 「奥羽407号」は、いもち病抵抗性極強・良食味の「中部111号」(「みねはるか」)を母とし、直播向き・多収・良食味の「奥羽382号」(「萌えみのり」)を父とする交配組合せから育成された系統である。後代系統の段階で、DNAマーカー選抜を行い、いもち病圃場抵抗性遺伝子“Pi39”を持つ系統を選抜した。
  2. 育成地における出穂期、成熟期は「ひとめぼれ」並で、“中生の晩”熟期に属する(表1)。
  3. 稈長は「ひとめぼれ」より短く、穂長および穂数は同程度で、草型は“偏穂数型”である(表1)。
  4. 耐倒伏性は“強”で、移植栽培、直播栽培いずれにおいても倒伏は「ひとめぼれ」より明らかに少ない(表1)。
  5. いもち病真性抵抗性遺伝子型は“PiaPii”と推定される。いもち病圃場抵抗性は、葉いもち、穂いもちともに“極強”である(図1)。白葉枯病抵抗性は“やや強”で、縞葉枯病には“罹病性”である。障害型耐冷性は“強”である(表1)。
  6. 移植栽培における精玄米重は「ひとめぼれ」並である。直播栽培における精玄米重は移植栽培並かやや低いが、「ひとめぼれ」より多収である。
  7. 外観品質は「ひとめぼれ」並の“上中”である。食味は「ひとめぼれ」並の良食味である。玄米タンパク質含有率は「ひとめぼれ」並で、白米アミロース含有率は「ひとめぼれ」より1ポイント程度低い(表1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 新潟県の農業生産法人で、直播栽培での「奥羽407号」の作付けを予定している。2014年の普及見込み面積は5haである。
  2. 栽培適地は「ひとめぼれ」熟期の作付けが可能な東北中南部以南である。
  3. 縞葉枯病には罹病性であるので、常発地帯での作付けは避ける。

[具体的データ]

(梶 亮太)

[その他]

研究課題名
米粉等加工用・業務用水稲品種の育成及び米の未利用成分利用技術の開発
予算区分
委託プロ(ブランドニッポン、加工プロ)、交付金
研究期間
2003〜2012年度
研究担当者
梶亮太、太田久稔、福嶌陽、津田直人、山口誠之、中込弘二、片岡知守、遠藤貴司、横上晴郁