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イネ第4染色体上の白葉枯病抵抗性と連鎖するいもち病圃場抵抗性遺伝子

[要約]

水稲品種「あそみのり」が保有するいもち病圃場抵抗性遺伝子Pias(t)は、第4染色体上のDNAマーカーYX4-3からNX4-1の約162kb、白葉枯病抵抗性遺伝子Xa1-as(t)とフェノール反応因子Phは、YX4-5からRM5709の間、約450kbに座乗しており、これらの両病害抵抗性は密接に連鎖している。

[キーワード]

イネ、あそみのり、いもち病圃場抵抗性、白葉枯病抵抗性、Xa1、Pias(t)

[担当]

宮城県古川農業試験場・作物育種部

[代表連絡先]

電話0229-26-5105

[区分]

東北農業・稲(稲品種)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

日本型水稲品種「あそみのり」は、白葉枯病抵抗性とともにいもち病圃場抵抗性も強く、交配母本として広く利用されていたが、そのいもち病圃場抵抗性遺伝子の存在は不明であった。本遺伝子と白葉枯病抵抗性遺伝子との連鎖により両病害抵抗性を同時に導入できる可能性が高いことから、育種上有用と考え、染色体上の座乗位置について明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 「あそみのり」に「おきにいり」を戻し交配した系統から、いもち病圃場抵抗性葉いもち“強”の「羽系854」(のちの「奥羽411号」)を育成し、その後、「羽系854」と「ひとめぼれ」を交配、あるいは戻し交配を行い、第4染色体長腕が5つの遺伝子型グループに分類できる個体を得た(図1)。
  2. いもち病圃場抵抗性検定の結果、葉いもちの発病程度は、「ひとめぼれ」とグループ2〜4で高く、「あそみのり」、「奥羽411号」、グループ1、5で低かった(図2)。このことから、いもち病圃場抵抗性遺伝子Pias(t)は、YX4-3からNX4-1の約162kbに座乗すると推測される。
  3. グループ4とグループ5の葉いもちの発病程度の差は2009年が1.2、2010年が1.3となり、この領域が「あそみのり」型に置き換わることにより、発病程度は約1.2低下する(図2)。
  4. RM3534からRM3836間が「ひとめぼれ」型の固定系統(n=4)、「あそみのり」型固定系統(n=2)、ヘテロ型系統(n=10)の葉いもちの発病程度は、7.8、4.3、5.0となり、ヘテロ型系統と「ひとめぼれ」型系統間で有意差(P<0.01)が認められ、Pias(t)の効果は優性である。
  5. 白葉枯病抵抗性は、「ひとめぼれ」とグループ3、4で罹病性を示し、「あそみのり」、「奥羽411号」及びグループ1、2、5で抵抗性反応を示した。Ph反応については、「ひとめぼれ」とグループ3、4で陰性を示し、「あそみのり」、「奥羽411号」及びグループ1、2、5で陽性を示した()。以上のことから、Xa1-as(t)とPhは、Pias(t)と密接に連鎖しており、YX4-5からRM5709の間、約450kbに座乗すると推測される(図1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 図1の詳細なマーカー情報は、発表論文(Endo et al.,2012)の付表を参照。
  2. 第4染色体に座乗する既知のいもち病圃場抵抗性遺伝子Pi39Pikahei-1(t)との異同は不明である。
  3. 「きんのめぐみ」(系統名:奥羽411号、いもち病圃場抵抗性、白葉枯病抵抗性ともに“強”)は、本遺伝子を保有する品種である。

[具体的データ]

( 宮城県古川農業試験場)

[その他]

研究課題名
水稲新品種の開発
予算区分
交付金(2004〜2007 年度)、県単(2008〜2010 年度)
研究期間
2004〜2010 年度
研究担当者
遠藤貴司、山口誠之、梶亮太、中込弘二、片岡知守、横上晴郁、中村俊樹、石川吾郎、米丸淳一(生物研)、西尾 剛(東北大農)
発表論文等
Endo T. et al.(2012)Breeding Sci:62(4)334-339.