研究所トップ研究成果情報平成24年度

育苗箱全量施肥と密植の組み合わせによる白未熟粒発生軽減

[要約]

水稲中苗移植栽培「あきたこまち」において、育苗箱全量施肥と密植(栽度24.2株 m-2)を組み合わせた無効分げつ抑制栽培は、高温登熟条件下においても白未粒の発生が少ない。

[キーワード]

イネ 、育苗箱全量施肥、栽植密度、高温登熟、白未熟粒 、整粒歩合

[担当]

秋田農試・作物部、生産環境部

[代表連絡先]

電話018-881-3330

[区分]

東北農業・稲(稲栽培)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

寒冷地北部に位置する秋田県においても、高温登熟による白未熟粒増加に伴う品質低下が問題となり 、白未熟粒発生の軽減技術の確立が必要である。「あきたこまち」の中苗移植栽培において、収量が多く、整粒歩合が高い主茎と第3節から第6節までの1次分げつ(金ら2005)を主体に有効穂を確保する育苗箱全量施肥と密植の組み合わせ(三浦ら2009)による無効分げつ抑制栽培は、慣行栽培並の収量が高い整粒歩合で得られるが、高温登熟条件での検討はされていない。そこで、無効分げつ抑制栽培の高温登熟下での白未熟粒発生の軽減技術としての適用性を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 無効分げつ抑制栽培は、育苗箱全量施肥専用肥料「育苗まかせ(LPS100)」を用いて育苗し、中苗を4個体 株-1、栽植密度24.2 株m-2(移植機 80 株セット)で移植する。追肥は行わない。
  2. 無効分げつ抑制栽培は慣行栽培と比較して、有効穂全体に占める主茎および第3節〜第6節からの1次分げつの割合と有効茎歩合が高い(表1)。
  3. 無効分げつ抑制栽培は慣行栽培と比較して 、有効茎決定期から減数分裂期までの葉緑素計値の低下は小さい(図1A)。高温処理の有無にかわらず無効分げつ抑制栽培は慣行栽培と比較出穂25日後(8月26日)の葉緑素計値が高い。(図1B
  4. 無効分げつ抑制栽培は慣行と比較して、高温処理によっても収量の低下が少ない(表1)。
  5. 2007年の無効分げつ抑制栽培の整粒歩合、白未熟粒率は慣行栽培と同等である。2010年の無効分げつ抑制栽培は慣行栽培と比較して、白未熟粒率が低く整粒率が高い。(表2
  6. 高温登熟条件下における無効分げつ抑制栽培の白未熟粒率は慣行栽培と比較して低く、品質の低下しやすい二次枝梗におても同じ傾向である(表2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 中苗あきたこまちの育箱全量施肥による栽培は、 主に秋田県内の平坦地で実施されている。
  2. 試験実施2カ年の出穂後40日間の気温差(平年差)は、2007年では23.5度C(+0.7)で、2010年では25.1度C(+2.3)である (アメダス大正寺)。またビニルハウス内の日最高気温は同外と比較して、2007年では地表から80cmで1.7度C、2010年では同80cmで1.4度C高い(表3)。
  3. 高温処理は小型のビニルハウス(縦3.6m×横2.4m×高2.4m)を設置して実施。ビニルハウス設置期間は、2007年8月6日〜20日、2010年8月6日〜21日。ビニルは屋根と側面に張り、地表面から2007年は70cm、2010年は50cmを開放 。
  4. 試験年次は2007年および2010年。無効分げつ抑制栽培の施肥量は2007年:N6gm-2、2010年:N6.5gm-2。慣行栽培(栽植密度22.2株m-2・移植機70株せっと)は基肥(全層施肥)と減数分裂期追肥。施肥量は基肥N6gm-2、追肥N2gm-2。いずれの栽培法もリン酸、カリの施肥は耕うん前にP2O5、K2Oで6gm-2。試験区は3往復。

[具体的データ]

(秋田県農業試験場)

[その他]

研究課題名
秋田米総合支援対策
予算区分
県単
研究期間
2007、2010 年度
研究担当者
三浦恒子、進藤勇人、松本眞一、佐藤雄幸
発表論文等
三浦・進藤 2012 日本作物学会東北支部会報55:43-44