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水稲におけるゼオライトとカリ資材の放射性セシウム吸収抑制効果

[要約]

ゼオライト、ケイ酸カリ、塩化カリの施用は稲体、玄米における放射性セシウム吸収抑制効果が認められ、ケイ酸カリより塩化カリが放射性セシウム吸収を強く抑制する。出穂約35日前の塩化カリの追肥は放射性セシウム吸収抑制効果が認められる。

[キーワード]

放射性セシウム濃度、ゼオライト、カリ資材、交換性カリ含量

[担当]

福島県農業総合センター・作物園芸部・稲作科

[代表連絡先]

電話024-958-1700

[区分]

東北農業・稲(稲栽培)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

現地水田においてゼオライトや各種カリ資材が放射性セシウム対策に使用されているが、その効果や効率的な施用方法については明らかとされていない点が多い。本試験では平成23年度緊急時モニタリング検査において玄米から100Bq/kgを超える放射性セシウムが検出された阿武隈山系の花崗岩を母材とした水田において、水稲におけるゼオライト、ケイ酸カリ、塩化カリの放射性セシウム吸収抑制効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. ゼオライトは土壌中の交換性カリ含量を増加させ、放射性セシウム吸収抑制効果が認められる(表1)。ゼオライト50kg/aとケイ酸カリ(土壌中の交換性カリ含量25mg/100gを目標に施肥、約16kg/a)の放射性セシウム吸収抑制効果は、ほぼ同等である。
  2. 塩化カリはケイ酸カリより土壌中の交換性カリ含量を速やかに上昇させ、放射性セシウム吸収抑制効果もケイ酸カリより高い(表2)。
  3. 出穂約35日前の塩化カリ1.0kg/aの追肥は、放射性セシウムの吸収抑制効果が認められる(図1)。
  4. 基肥、追肥ともに塩化カリを使用することで玄米中の放射性セシウム濃度は大きく低下する(図1)。
  5. 生育期間を通じて土壌中交換性カリ含量と玄米中の放射性セシウム濃度の間には、高い負の相関が認められる(表3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本結果は阿武隈山系の花崗岩を母材としたCECの低い細粒グライ土(CEC 11〜14meq/100g)における試験である。
  2. 供試したゼオライトは、福島市飯坂産、カリ成分2.2%、CEC160〜190meq/100gである。
  3. 資材投入前の土壌中の交換性カリ含量が異なる場合、各資材の放射性セシウム吸収抑制率は異なると考えられる。

[具体的データ]

( 福島県)

[その他]

研究課題名
吸着資材による吸収抑制技術の開発
予算区分
全農委託、委託プロ(高濃度農地汚染土壌の現場における処分技術の開発)
研究期間
2012 年
研究担当者
佐久間祐樹、佐藤誠