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ニンニクのテンパリング乾燥による高品質化
[要約]
昼夜の温度を切り替えて通風するニンニクりん茎のテンパリング乾燥は、実用規模「シート乾燥」方式でも氷点下貯蔵時に発生するくぼみ症等の障害の発生が少なく、実用性が高い。また、夜の加温中断により燃料使用量が削減され低コストである。
[キーワード]
ニンニク、テンパリング乾燥、貯蔵障害、乾燥温度、飽差、低コスト
[担当]
青森産技セ・野菜研究所
[代表連絡先]
電話0176-53-7171
[区分]
東北農業・野菜花き(野菜)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
青森県のニンニクは、6月半ばから7月に収穫後1か月をかけて乾燥され、長期貯蔵する場合は乾燥直後から−2℃で貯蔵される。−2℃貯蔵したりん茎では貯蔵葉表面が陥没するくぼみ症や組織が透明になる障害が発生する場合があり、問題となっている。これまで、障害の発生には貯蔵前の乾燥条件が影響し、テンパリング乾燥(昼間は35℃加温・通風、夜間は無加温または昼間より低温・通風条件での乾燥)したりん茎では、−2℃貯蔵後の障害発生が少ないことを明らかにした。
一方、青森県では、りん茎の積み方の違いにより、「棚乾燥」、「井桁積み乾燥」、「シート乾燥」の3つの方式で乾燥が行われてきた。このうち、シート乾燥は狭い場所で大量のりん茎を乾燥することが可能で、近年実施例が増加している。
これまでテンパリング乾燥の有効性は井桁積み方式でのみ確認しており、テンパリング乾燥を現場へ普及させるために、「シート乾燥」方式での適応性を評価する。
[成果の内容・特徴]
- 実用規模りん茎4,000kg(約30a分)の「シート乾燥」方式において、昼温35℃程度とし、夜温を低下させるテンパリング条件で通風乾燥したりん茎の氷点下貯蔵後の障害発生は、35℃連続乾燥より少ない(図1)。
- テンパリング乾燥では、くぼみ症の発生が高まるとされる平均温度31℃以上、平均飽差2.2kpa以上に達しにくい(図1)。
- テンパリング乾燥では、夜の相対湿度が高まるため(図2)、乾燥日数は連続加温乾燥より8日程度多くかかるが、入気側及び排気側ともむらなく乾燥でき(データ略)、燃料使用量は連続乾燥の55%(3か年平均)と大幅に削減できる(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 普及対象:ニンニクの生産者、貯蔵関係者、加工事業者
- 普及予定地域・普及予定面積:全国2,240ha(23年度)のうち生出荷を除く
- その他:
- ニンニクの生産、貯蔵方法について、全国からの問い合わせがある。
- 「棚乾燥」は網袋に詰めたりん茎を棚に並べて乾燥させる方法、「井桁積み乾燥」と「シート乾燥」はいずれもりん茎の収納にコンテナを利用するが、前者は隙間があって乾燥中の湿度が低いのに対し、後者は150〜210(試験例は標準、900× 300×248mm)のコンテナを2列×7段×15列で210個)を隙間なく積層し、周囲を水を透さないシートで覆い通風して乾燥させる方式で、夜の低温時に高湿度となりやすい。
- りん茎約4,000kgに対し60m3/minの送風機(風量比1.5 m3 /min/100kgf)で吸引式通風、昼間を8:00〜18:00、夜間18:00〜8:00の加温設定を20℃とした場合の結果である。
- 品種「福地ホワイト」での結果である。
- 常温貯蔵では、連続乾燥したりん茎でもくぼみ症などの障害は発生しない。
- 通風方式を吸引式とした場合の結果である(H22年度成果情報を参照)。
[具体的データ]



(庭田英子、伊藤篤史)
[その他]
- 研究課題名
- 高品質国産ニンニクの周年安定供給を実現する収穫後処理技術の開発
- ニンニクの高品質・低コスト乾燥技術の確立
- 予算区分
- 実用技術、青森県重点事業、JA全農青森県本部営農対策費
- 研究期間
- 2009〜2011年
- 研究担当者
- 庭田英子、伊藤篤史、山崎博子(東北農研)、八谷満(生研センター)
- 発表論文等
- 庭田ら(2010)東北農業研究、63:131-132