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海水により上昇した塩分濃度が野菜類の生育に及ぼす影響
[要約]
イチゴ、キュウリ、リーキは、耐塩性が弱くEC 0.5dS/m以上で生育が抑制され、イチゴ、リーキで枯死株が見られる。ナバナは、中程度でEC 0.5dS/mでは生育の抑制は少なく、枯死株も見られない。アスパラガスは、耐塩性が強くEC 2.0dS/mでやや生育が抑制される。
[キーワード]
イチゴ、キュウリ、アスパラガス、リーキ、ナバナ、耐塩性
[担当]
宮城農園研・園芸栽培部・野菜チーム、園芸環境部・土壌環境チーム
[代表連絡先]
電話022-383-8132
[区分]
東北農業・野菜花き(野菜)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
海水流入農地の除塩や除塩程度に応じた作付品目の選定には、作物の耐塩性を把握する必要がある。そこで、本県の基幹品目及び耐塩性が期待される数種の野菜類について、土壌の塩分濃度と生育との関係を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- イチゴは、EC 0.3dS/mの塩分濃度では生育への影響はない。EC 0.6dS/mでは乾物重が30%〜60%程度低下し、砂土の方が埴土より大きく低下する。EC 1.0dS/m以上の高塩分濃度では草丈が50%以下となり、乾物重も大幅に低下する(表1、図1)。EC 2.0dS/mで埴土は9割、EC 1.0dS/mで砂土は5割程度の枯死株が見られる(データ省略)。
- キュウリは、EC 0.5dS/mで下位葉縁からの枯れ込みが発生し、EC 1.0dS/mでは草丈、乾物重とも大きく低下し、対照比50%以下となる。接木栽培と自根栽培では自根栽培の方がより乾物重が低下する(表1、図1)。EC 1.0dS/mまでは生育中枯死株は見られない。
- アスパラガスは、EC 2.0dS/mで乾物重が対照比36〜42%に低下する(表1)。草丈はEC 1.0dS/mまで減少は見られず、EC 2.0dS/mで対照の85%である(図1)。EC 2.0dS/mまでは生育中枯死株は見られない。
- リーキは、EC 0.5dS/mで乾物重が40%程度低下し、EC 1.0dS/mでは草丈、乾物重とも大きく生育が抑制される。EC 2.0dS/mでは定植後20日程度で全て枯死する(表1、図1)。
- ナバナは、EC 1.0dS/mで草丈や乾物重が20%程度低下し、やや生育抑制が見られ、EC 1.5dS/mでは大幅に低下する(表1、図1)。EC 1.5dS/mまでは生育中枯死株は見られない。
- イチゴは、EC 2.0dS/mでナトリウム濃度が増加し、カリウム濃度が低下する(図2)。アスパラガスは、塩分濃度が高まると根部のナトリウム濃度は増加するが、カリウム濃度の低下は見られない(図3)。
[成果の活用面・留意点]
- 本試験は、根域が制限された隔離土壌で実施し、潅水の自動化で溶脱水を減らし塩分濃度の変動を抑制している。培土は、埴土(EC 0.06〜0.29dS/m)一部、砂土(EC 0.07dS/m)を用い、定植前の土壌に概ね設定のEC値となるよう希釈した海水を処理した。
- 各品目の品種と栽培期間は、イチゴ「とちおとめ」(2011年8月12日〜10月12日)、キュウリ「グリーンラックス」台木:ゆうゆう一輝黒(2011年10月3日〜12月15日)、アスパラガス「スーパーウェルカム」・リーキ「ポワロ」(2011年6月23日〜9月13日)、ナバナ「早陽一号」(2011年10月13日〜2012年2月29日)である。
- 耐塩性は概ね以下のことから判断している。
弱:EC 0.5dS/m以上で生育抑制、EC 1.0dS/m以上で枯死、顕著な生育抑制あり。
中:EC 1.5〜2.0dS/mで枯死が発生するがEC 0.5dS/mでは生育抑制が少ない。
強:EC 1.5〜2.0dS/mでも枯死が発生せず生育抑制も少ない。
[具体的データ]




(宮城県農業・園芸総合研究所)
[その他]
- 研究課題名
- 耐塩性作物による早期経営改善対策
- 予算区分
- 国庫
- 研究期間
- 2011 年度
- 研究担当者
- 小島由美子、上山啓一、高野岩雄
- 発表論文等
- 小島ら(2012)東北農業研究、65(141-142)