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有孔緑マルチと不織布の併用により春〜初夏どりキャベツの収穫が早まる
[要約]
有孔緑マルチと融雪後の不織布被覆を併用することにより、春〜初夏どりキャベツの収穫を早め、秋田県の積雪寒冷地でも10月上中旬定植で5月中旬〜6月上旬収穫が可能となる。この組み合わせは春植えにも効果があり、4月中旬定植で2週間収穫が早まる。
[キーワード]
キャベツ、有孔緑マルチ、不織布被覆、積雪寒冷地、春〜初夏どり
[担当]
秋田農試・野菜・花き部・野菜担当
[代表連絡先]
電話018-881-3330
[区分]
東北農業・野菜花き(野菜)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
積雪寒冷地である秋田県では、一部の地域を除き、露地キャベツの収穫は6月下旬以降である。近年、道の駅などに農産物直販所が多く設置され、地産地消の推進により、これまで他県産に頼っていた5〜6月にも県内産キャベツの要望が高まっている。従来の4月定植6〜7月収穫に対し、秋定植の越冬栽培による6月収穫が検討されてきたものの、積雪による越冬率の低下や融雪後の抽だいが問題となっている。そこで、定植時のマルチによる初期生育促進及び越冬率向上、品種選定による抽だいの回避、融雪後の不織布被覆による生育促進について検討する。
[成果の内容・特徴]
- 収穫期はその年の気象条件により変動する。10月中旬定植の場合、融雪が早く融雪後の気温が高い暖冬年(2008年度)で5月中旬、融雪が遅く4〜5月の気温が低い年(2010年度)で6月上旬の収穫となる(表1)。
- 融雪後の不織布被覆のみでも収穫を早める。最も効果が高いのは、品種では「春ひかり七号」、定植は10月中旬の場合である(表2)。
- 有孔緑マルチと融雪後の不織布被覆併用により、10月上旬定植で平均収穫日を4〜6日早める。収穫率、調整球重、収量への効果は、総合的に他のマルチより優れる(表3、表4)。
- 収穫の早さでは「春ひかり七号」が優れるが、収量では「金春」が優れる(表4)。
- 有孔緑マルチと不織布被覆の併用効果は春定植でも認められ、収穫を2週間前進させ、収穫率、球重、収量を増加させる(表4)。
[成果の活用面・留意点]
- 積雪寒冷地では、定植時からの不織布被覆で根雪期間中に多くの個体が枯死する場合があるので、融雪後の被覆とする。また、高温期に軟腐病多発により生存率や収穫率が低下する場合があるので、結球初期には不織布を除去し、薬散による防除を徹底する。
- 既に多くの報告があるように、マルチは晴天時に地表面の温度を急上昇させるが、不織布はこの温度上昇を緩和させる。有孔マルチにより、この上昇がさらに緩和できる(データ略)。しかし、有孔マルチでも土壌中の水分含量は無孔マルチと同等に高い(データ略)ので、融雪時及び降雨時の排水に留意する。
- 10月上中旬定植でも、品種により抽だいする場合があるので、品種選定に留意する。
- 耕種概要は以下のとおり。試験場所:秋田県農業試験場(秋田市雄和)。不織布被覆:べたがけ。施肥量(kg/a):基肥N、P、K各1.5、追肥各1.5(春定植は追肥なし)。栽植密度:2008年度;畝幅60cm、株間35cm(476株/a)、2009年度以降;畝幅120cm、条間30cmの2条植え、株間35cm(475株/a)。有孔マルチ:約3cm×3cm間隔に釘で穴あけ。各年度の追肥日、不織布被覆期間は表1に示す。
[具体的データ]




( 秋田県農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 「秋田の顔となる野菜」の生産拡大を目指した新技術開発
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2008〜2012 年度
- 研究担当者
- 新井正善、篠田光江、田村 晃
- 発表論文等