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積雪寒冷地における無加温ハウスによるキャベツの越冬4〜5月収穫
[要約]
積雪寒冷地の秋田県でも無加温ハウスを利用した越冬栽培により、キャベツの4〜5月収穫が可能となる。品種は「金春」及び「春波」が適し、10月中旬〜11月中旬に定植し、12月中旬に10葉齢以下とすることにより、抽だいすることなく収穫できる。
[キーワード]
キャベツ、無加温ハウス越冬栽培、葉齢、4〜5月収穫、品種
[担当]
秋田農試・野菜・花き部・野菜担当
[代表連絡先]
電話018-881-3330
[区分]
東北農業・野菜花き(野菜)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
積雪寒冷地である秋田県では、一部の地域を除き、露地キャベツの収穫期は6月下旬以降に限られている。近年、地産地消の推進により、道の駅などに農産物直販所が多く設置され、これまで他県産に頼っていた5〜6月にも県内産キャベツの要望が高まっている。従来の4月定植6〜7月収穫に対し、これまで秋定植の越冬栽培による6月収穫が検討されてきたものの、積雪による越冬率の低下や気象条件による収穫時期の年次変動が問題となっている。そこで、無加温ハウスを利用する越冬栽培による早期収穫について検討する。
[成果の内容・特徴]
- 大苗(6葉齢)を用いると、11月10日定植で抽だいすることなく4月中旬から収穫できる。品種は「金春」及び「春波」が適し、収穫率97%以上、球重は平均1kg以上、収量は500kg/a程度である(表1)。
- 小苗(1.5〜2.7葉齢)を用いても、10月中旬〜11月中旬定植で抽だいや内部抽だいすることなく4月〜5月に収穫できる。収穫率及び収量の点から、4月収穫では「金春」の10月中旬定植または「春波」の10月下旬定植が適し、5月収穫では「金春」の11月中旬が適する(表2)。
- 12月中旬の葉齢が11以上では抽だいや内部抽だいする場合があるが、10葉齢以下では認められない。(表2)。
- 11月上旬の大苗定植では収穫期間が2週間以内に集中する(表1)。一方、小苗定植では、定植が早いほど収穫始めは早くなるが、収穫期間のばらつきも大きくなる(表2)。
- 3〜4月収穫では、球密度が低く、しまりの弱い球となる。一方、5月以降の収穫では、球密度が高く、しまった球となる(表2、図1)。
- ハウス内の最低気温は12〜2月には0〜-8度Cとなる(図2)が、凍害は認められない。
[成果の活用面・留意点]
- 秋田県農業試験場(秋田市雄和)での試験結果である。
- 作期を通じて十分な灌水に心がける。乾燥すると、定植直後は生育がばらつき、結球中は小玉になりやすい。
- 積雪寒冷地では積雪期間中のサイド換気は難しいが、晴天日にはハウス内が高温になりやすい(図2)ので、可能な限り換気を行う。
- 1〜2月に菌核病が、3〜4月に軟腐病が発生しやすいので、薬剤による早期防除を徹底する。
- 収穫時期により球質(球のしまり具合)が異なるので、出荷や販売の際には留意する。
[具体的データ]




( 秋田県農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 「秋田の顔となる野菜」の生産拡大を目指した新技術開発
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2008〜2012 年度
- 研究担当者
- 新井正善、篠田光江、本庄 求
- 発表論文等
- 新井ら、2013 年園芸学会春季大会発表予定