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ソリュブル(鰹煮汁)を活用したミズナの養液栽培

[要約]

ソリュブルを活用してミズナの養液栽培をすると、収穫物の葉色、遊離アミノ酸含量及び食味は向上する。

[キーワード]

有機質肥料活用型養液栽培、ミズナ、NFTシステム

[担当]

福島県農業総合センター・作物園芸部野菜科

[代表連絡先]

電話024-958-1700

[区分]

東北農業・野菜花き(野菜)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

養液栽培は作業性や施肥管理の容易性等でメリットがある一方、食味については一部で土耕栽培のものより劣るとの評価がある。そこで化学肥料のものと差別化が期待される有機質肥料であるソリュブルを活用するミズナの養液栽培(NFTシステム)技術を確立するとともに、収穫物の品質や食味に与える影響を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. ソリュブル使用では窒素施用量を化学肥料使用より4割程度増やすことで、化学肥料使用と同等の収量が得られる(表1)。
  2. ソリュブル使用は培養液中鉄濃度が低く推移するため、キレート鉄を施用することで生育は安定する(データ省略)。
  3. 化学肥料使用よりソリュブル使用で植物体中遊離アミノ酸は高い傾向がみられる(図1)。
  4. 食味については、化学肥料使用よりソリュブル使用で「甘み」が強く、「苦み」「えぐみ」は弱くなり、「総合」でも優れる(図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 養液栽培生産者や植物工場において販売面で有利となることが期待される。
  2. ソリュブルは鰹節製造過程で発生する食品廃棄物であり、窒素成分は6%程度である。
  3. 定植前に、ソリュブルを硝酸態窒素まで分解させる行程が必要である。即ち、培養液1Lあたり微生物源(土壌等)0.5gとソリュブル0.2gを添加し、微生物によりソリュブルが硝酸態窒素まで分解されたことを試験紙等で確認してから定植する。
  4. 既存のNFTシステムでは微生物集積による養液の供給部分の詰まりが発生するので改修が必要である。ここでは、水口を16mm口径とし、栽培ベット上の水量を均一とするため培養液を雨樋で貯めてオーバーフローさせる形式をとった(写真1)。
  5. 同じ窒素施用量の場合、慣行の化学肥料での栽培より収穫までの日数が一週間程度長くなる。
  6. 養液栽培のため有機JAS認定は受けられない。
  7. 有機物を分解する過程で微生物を活用するため用水には留意し、微生物の活動に影響を及ぼさない井水等を使用するのが望ましい。

[具体的データ]

(福島県)

[その他]

研究課題名
葉菜類の有機質肥料活用型養液栽培による栽培技術の開発
予算区分
実用技術
研究期間
2010〜2012 年度
研究担当者
三好博子、雨宮潤子、丹治克男、篠原信(農研機構)
発表論文等