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土壌中の塩分濃度(海水)がキクとカーネーションの生育に及ぼす影響

[要約]

キクはEC0.9 dS/m 以上で枯死株が発生し、EC が高まると切花品質は低下するが、茎葉中のナトリウム濃度は低い。カーネーションはEC2.0 dS/m で枯死株が発生し、EC が高まると草丈が短くなり、ナトリウムの過剰吸収やカルシウム濃度の低下が見られる。

[キーワード]

キク、カーネーション、耐塩性

[担当]

宮城農園研・園芸栽培部・花きチーム、園芸環境部・土壌環境チーム

[代表連絡先]

電話022-383-8132

[区分]

東北農業・野菜花き(花き)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

海水流入農地の除塩や除塩程度に応じた作付品目の選定には、作物の耐塩性を把握する必要がある。そこで、本県の基幹品目の花き類について、土壌の塩分濃度と生育との関係を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. キクではEC0.6 dS/m 以下で枯死株は発生しないが、0.9 dS/m 以上で定植10 日目頃から枯死株が発生する。EC が高まると切花品質(切花長・切花重・茎径)は低下するが,到花日数には差が認められない(表1)。土壌中のナトリウム濃度が高くなると、茎葉中のナトリウム濃度も高くなるが、特にカルシウムやカリウムと比較し非常に低い濃度である。カルシウム、マグネシウム、カリウムの濃度には差が認められない(図1)。
  2. カーネーションではEC1.0 dS/m 以下で枯死株は発生しないが、2.0 dS/m で定植30 日目頃から枯死株が発生する。EC が高まると草丈は短くなり、展開葉対数は少なくなり、生育の停滞が認められる(表2)。土壌中のナトリウム濃度が高くなると、茎葉中のナトリウム濃度は高くなり、カルシウム濃度は低くなる。マグネシウムやカリウム濃度には差が認められない(図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 所内褐色森林土に水で希釈した海水を処理し,設定のEC 値に調整した。試験土壌の設定EC と塩素およびナトリウム濃度の関係は以下のとおりである。対照:塩素(Cl)4 mg/100g・ナトリウム(交換性+水溶性Na2O)16 mg/100g、EC0.5 dS/m:塩素87 mg/100g、ナトリウム87 mg/100g、EC1.0 dS/m:塩素209 mg/100g、ナトリウム189mg/100g、EC1.5 dS/m:塩素328 mg/100g、ナトリウム248 mg/100g、EC2.0 dS/m:塩素566mg/100g、ナトリウム364 mg/100g
  2. 本試験は、根域が制限された隔離土壌で実施し、かん水の自動化で溶脱水を減らし塩分濃度の変動を抑制している。
  3. キクは品種「深志の匠」を供試し、2011 年6 月23 日に定植した。カーネーションは「ライトピンクバーバラ」を供試し、2011 年6 月1 日に定植した。
  4. 茎葉中の塩素は未分析であるが、ナトリウムと同様に吸収されている可能性がある。
  5. キクとカーネーションの耐塩性は中程度と判断されるが、慣行と同程度の生育を確保するには作付前の土壌を概ねEC0.5 dS/m 以下まで除塩することが安全と思われる。

[具体的データ]

(宮城県農業・園芸総合研究所)

[その他]

研究課題名
耐塩性作物による早期経営改善対策
予算区分
国庫
研究期間
2011 年度
研究担当者
鈴木誠一、村主栄一、高橋秀典、上山啓一
発表論文等
鈴木ら(2012)東北農業研究、65(177-178)