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ミールの多角的利用が可能な高収油量のなたね新品種候補系統「東北99号」

[要約]

エルシン酸を含まず、グルコシノレートが低いダブルローなたね新品種候補系統「東北99号」は、食用油に適し、ミールの多角的利用が可能である。標準品種と比較し、収量性がやや高く、収油量も多い、寒冷地向きの品種である。

[キーワード]

なたね、収油量、ダブルロー、ミール、多角的利用

[担当]

東北農業研究センター・畑作園芸研究領域

[代表連絡先]

電話 019-643-3655

[区分]

東北農業・畑作物(品種)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

なたねは、国内で供給できる貴重な油料作物の一つであり、油脂ばかりでなく、ミール(搾りかす)も収益性の大きな柱である。無エルシン酸で低グルコシノレートのダブルロー品種は食油に適し、ミールは肥料だけでなく、飼料等の多角的な利用が可能になる。しかし、これまで、「キラリボシ」等のダブルロー品種は、無エルシン酸の「キザキノナタネ」に比し、収量性に劣り、普及が進まなかった。以上のことから、多収のダブルロー新品種を育成し、地域振興及び新たな需要拡大に貢献する。

[成果の内容・特徴]

  1. 「東北99号」は、2003年、ダブルローで多収の「CASCADE」(ジーンバンクJP番号36290)を種子親に、ダブルロー品種「キラリボシ」を花粉親として交配、育成された、秋播きの食油用品種である。2014年の世代は、F12である。
  2. 「東北99号」は「キザキノナタネ」と比較して、開花期及び成熟期はやや早く、草丈がやや高い(図1)。菌核病罹病指数が高い傾向にある。収量性はやや高く、含油率も高い傾向にあり、収油量が高い。子実中の総グルコシノレート含量は、「キラリボシ」と同等で低く、ダブルロー品種である(表1)。
  3. 福島県の適応性試験では「東北99号」は標準品種「アサカノナタネ」と比較して、越冬率に優り、成熟期が晩く、草丈がやや高く、多収である。含油率及び収油量も高い傾向にある(表2)。「キザキノナタネ」と比較して収量性は会津地域研究所で優る。
  4. 「東北99号」の食味試験において、「キザキノナタネ」より色と味の評価が高い傾向にある(図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 多収でありダブルロー品種のため、生産者の増収による収益性改善、ミール(搾りかす)を多角的利用する実需のニーズに応えられる。将来的な普及面積として、寒冷地において50haを見込む。
  2. 他のなたね品種、アブラナ科植物との交雑防止のため、隔離された採種圃場で種子を増殖する。一般栽培では、採種圃由来の保証された種子を使用する。
  3. 菌核病対策として、過度の密植及び多肥栽培を避け、輪作等の耕種的防除を図るとともに、適宜、殺菌剤散布も併用する。
  4. 種子は小粒であるため、播種前には砕土を細かくし、覆土においては2〜4cm程度とし、鎮圧を行う。

[具体的データ]

(本田裕、川崎光代)

[その他]

研究課題名
高付加価値を有する資源作物品種の育成と新規作物の評価・利用
予算区分
交付金、実用技術、その他外部資金(地域再生)
研究期間
2002〜2014年度
研究担当者
本田裕、川崎光代、山守誠、加藤晶子、由比真美子
発表論文等
本田ら 品種登録出願2015年6月10日(第30256号)