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アレチウリの大豆圃場における出芽消長と耕地周辺における種子生産の抑制方策
[要約]
大豆圃場におけるアレチウリの出芽は、大豆による遮光で抑制される。宮城県北部の裸地条件では、アレチウリは10月まで出芽するが、9月下旬以降に出芽した個体はほとんど成熟種子を生産せず、9月上〜中旬の除草剤散布によって種子生産を抑制できる。
[キーワード]
アレチウリ、大豆、出芽消長、種子生産
[担当]
宮城県古川農業試験場・水田利用部
[代表連絡先]
電話0229-26-5106
[区分]
東北農業・畑作物(畑作物栽培)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
近年宮城県において、難防除雑草であるアレチウリの耕地周辺部及び大豆圃場への侵入が拡大しており、対策が急務となっている。現在、大豆圃場においてアレチウリが発生した場合は、手取り除草以外の有効な防除法がない。アレチウリはつる性で大豆に複雑に絡みつくこと、果実には鋭い刺が密生することなどから、多発した場合には手取り除草も困難となり、収穫皆無となる事例もある。そこで、大豆圃場や耕地周辺における出芽消長と種子が成熟する出芽晩限等を明らかにし、本草種防除の参考とする。
[成果の内容・特徴]
- 大豆圃場のアレチウリは地表面下0.5〜14.3cmと幅広い深度から出芽する(図1)。
- 大豆圃場におけるアレチウリの出芽は、大豆の草高が概ね畦間幅を上回り、地表面が遮光される時期以降は抑制される。大豆による遮光条件で出芽したアレチウリは著しく生育不良となり、その多くは枯死する。一方、大豆による遮光がない条件では、アレチウリの出芽は10月まで続く(図2)。
- 裸地条件において9月上〜中旬までに出芽したアレチウリは、つる長が100cm以上に達する個体が多く、成熟した種子を生産するが、9月下旬以降に出芽したアレチウリの多くはつる長が100cm以下にとどまり、種子はほとんど成熟しない(図3)。
- アレチウリが蔓延する河川堤防の法面上部で、8月以降に刈払いまたは除草剤散布を行うとアレチウリの果序数が大きく減少する。また、6月末〜7月上旬に刈払いを行い、9月上〜中旬に除草剤を散布した地点では、アレチウリはほとんど果実を生産しない(図4)。
[成果の活用面・留意点]
- 本知見は、アレチウリの大豆圃場における防除の他、耕作地への侵入経路となる河川敷や河川堤防、用排水路法面、農道、畦畔等におけるアレチウリ管理に応用できる。
- 河川敷や河川堤防、用排水路法面等の管理に当たっては、管理者や所管する行政組織等との必要な調整を行うこと。特に除草剤については、使用の可否について十分に確認すること。また、農耕地以外での除草剤の使用に当たっては、登録内容に留意するとともに、河川等の水系に農薬が流入しないよう十分に注意して使用すること。
- アレチウリの出芽期間や成熟種子を生産する出芽晩限は宮城県北部における結果であり、他地域で適用する場合は、当該地域における確認が必要である。
[具体的データ]
(宮城県古川農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 輪換田における大豆栽培の生育阻害要因克服技術の開発
- 大規模水田農業地帯における総合的雑草管理システムの構築
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2011〜2014年度
- 研究担当者
- 安藤慎一朗、大川茂範、三上綾子、石橋まゆ、内海翔太(宮城古川農試)、辻本淳一(元宮城古川農試)
- 発表論文等
- 1)安藤ら(2012)雑草研究、57(別):38
- 2)安藤ら(2013)雑草研究、58(別):58