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昆虫病原性線虫剤によるクロスグリのスグリコスカシバ防除技術
[要約]
クロスグリの枝幹害虫であるスグリコスカシバは、昆虫病原性線虫剤(スタイナーネマ カーポカプサエ剤)を秋に枝幹部へ散布すると防除できる。
[キーワード]
クロスグリ、スグリコスカシバ、昆虫病原性線虫剤、散布、防除
[担当]
青森産技セ・りんご研・県南果樹部
[代表連絡先]
電話0178-62-4111
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
青森県では2008年に、スグリコスカシバの発生がクロスグリ(別名:クロフサスグリ、英名:ブラックカラント、仏名:カシス)(以下「カシス」とする)で初確認された。青森県はカシスの国内生産量の9割以上を占める産地であるが、本種の発生により収量や果実品質に影響が生じている。しかし、これまで本種の防除に使用できる農薬はなかった。このため、枝幹害虫に効果がある昆虫病原性線虫剤(スタイナーネマ カーポカプサエ剤)による防除方法を検討する。
[成果の内容・特徴]
- カシスのスグリコスカシバ幼虫が発生している樹を対象に、スタイナーネマ カーポカプサエ剤(商品名:バイオセーフ)(2,500万頭/25L)を本剤の活動に適した秋(9月中旬〜下旬)の小雨時あるいは十分枝幹部が濡れている時に、背負式動力噴霧器を用いてフラスの排出か所(図2)を中心に、フラスを除去しないで枝幹部全体にかかるよう立木全面散布することにより本種を防除できる(表1、表2)。
- 晴天時の散布では効果が低い(表1、図1左)。
- 雨天時の散布では効果が高い(表2、図1右)。
[普及のための参考情報]
- 普及対象
カシス生産者及び指導機関関係者
- 普及予定地域・普及予定面積
スグリコスカシバ被害発生園(青森県の場合、約11ha)
- その他
- 散布時期はスタイナーネマ カーポカプサエの活動温度帯(15〜30℃)とスグリコスカシバ幼虫の生態、フラスの発生、カシス果実の有無(カシスでは結実してから収穫が終わるまで農薬を散布しない)を考慮し、9月中旬〜下旬を目安とする(青森県の場合)。スグリコスカシバは北海道、岩手県、長野県で病害虫発生予察特殊報が発表されており、青森県以外の地域では各地域の実態に合わせて使用する。
- 本剤は2014年7月23日に「ふさすぐり」のスグリコスカシバに適用拡大されたが、農薬登録における適用作物(平成13年10月10日付け13生産第3986号農林水産省生産局生産資材課長通知の別表1−1)では、作物名「ふさすぐり」に含まれる別名、地方名、品種名等の例には「カーランツ、カラント、カランツ、アカフサスグリ、クロフサスグリ、カシス」があり、カシスRibes nigrumとフサスグリRibes rubrum(別名:アカ(フサ)スグリ、英名:(レッド)カラント)に発生するスグリコスカシバの防除に使用できる。
- 本剤は生物農薬であるので、取扱いは使用上の注意事項を厳守する。
[具体的データ]




((地独)青森県産業技術センターりんご研究所)
[その他]
- 研究課題名
- カシス及びブルーベリーの農薬登録拡大試験
- 予算区分
- 受託(青森県農林水産部食の安全・安心推進課)
- 研究期間
- 2012年〜2013年
- 研究担当者
- 村井智子、内藤 誠、對馬千佳子
- 発表論文等
- なし