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リンゴわい性台樹における夏期の薬剤散布量
[要約]
ナミハダニ、輪紋病、炭疽病に対しては、夏期の薬剤散布量を550L/10aから400 L/10aに削減しても同等の防除効果が認められる。ただし、すす斑病に対しては、防除効果が劣ることがある。
[キーワード]
リンゴ、わい性台樹、薬剤散布量
[担当]
岩手農研セ・技術部・果樹研究室
[代表連絡先]
電話0197-68-4419
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
岩手県のリンゴにおけるスピードスプレーヤ防除による夏期の薬剤散布量は、これまで10a当たり550Lとして指導している。生産コストの削減が求められているが、薬剤散布量を削減した場合、樹体の繁茂程度が高く薬液到達性が劣る樹では、病害虫の防除効果が不安定となることが考えられる。そこで、結実部位が2.5m以下のリンゴわい性台樹において6月下旬以降の薬剤散布量を削減した病害虫防除効果を確認する実証試験を行い、夏期の散布条件の最適化を試みる。
[成果の内容・特徴]
- 送風量720立方メートル/minの条件において、薬剤散布量を400 L/10aまで削減した場合でも、夏期における主要病害虫であるナミハダニ、輪紋病、炭疽病に対しては、樹体の繁茂程度にかかわらず、550L/10a散布した場合と同等の防除効果が認められる(図1、図2)。
- 9月上中旬が高温多雨である場合や樹体の繁茂程度が高く薬液到達性が劣る樹では、散布量を400L/10aまで削減した場合、すす斑病に対する防除効果が劣ることがある(図2)。
[成果の活用面・留意点]
- 本試験における薬剤散布は、SSA-U1000(丸山製作所製)により行った。薬剤散布量は散布速度により調整し、400L散布時は2.0km/h、450L散布時は1.7 km/h、550L km/hとした。
- 本試験は、1996年秋植栽の「ふじ」/JM7(植栽距離5×6m)において、2.5m程度までの高さの葉および果実を調査した結果である。
- 樹高が高い場合は、散布むらが多くなる可能性があるので、低樹高化に努めるとともに、徒長枝のせん除等新梢管理を徹底する。
- 本試験における樹体の繁茂程度は、繁茂指数により評価した。繁茂指数は、リンゴ樹の樹体画像を画像解析し、枝葉の量を数値化した値で、繁茂指数診断プログラム(「果樹の成育状態評価方法」(特許4026684号)岩手農研セ)により算出できる。繁茂指数が低いほど薬液到達性は高くなる。詳細は、東北農業研究成果情報「繁茂指数によってわい性台りんご樹の窒素栄養状態が推定できる」(2004、岩手農研セ)、「リンゴとモモ、リンゴとセイヨウナシ複合経営における農薬の効率的散布技術マニュアル(2010、東北農研ら)を参照する。
[具体的データ]
(及川耳呂)
[その他]
- 研究課題名
- ハダニ類を主体としたリンゴ病害虫防除体系の最適化
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2010-2014年度
- 研究担当者
- 及川耳呂
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