研究所トップ≫研究成果情報≫平成26年度
オウトウ「佐藤錦」の高品質生産が可能な樹体構成と側枝形状
[要約]
オウトウ「佐藤錦」において安定して高品質果実生産が可能な樹体構成は、主枝本数が制限されて重なりがなく、主幹部から横に25°以下の傾きで幅広く伸びている。また、休眠期の3年枝上横向きの花束状短果枝幅の平均が16mm以上の側枝は、高品質の果実が生産できる。
[キーワード]
オウトウ、佐藤錦、樹体構成、側枝、花束状短果枝
[担当]
山形県農業総合研究センター・園芸試験場・果樹部
[代表連絡先]
TEL 0237-84-4125
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
近年、オウトウ主力品種の「佐藤錦」において、結実不安定、品質の低下等の問題が発生している。しかし、一部園地においては、安定した結実を確保し、高品質果実生産を実践している。
そこで、これらの優良園の光環境や樹体生育、作業管理方法について調査し、気象変動下にあっても高品質果実を安定生産できる樹体構成や側枝の形状及び花束状短果枝の形質を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 樹全体に日当たりの良い樹は果実品質が優れ、このような樹では5月下旬の樹冠内の相対照度が60%以上である(表1)。
- 収穫始期に1果重7g以上、糖度18(Brix%)以上、着色70%以上の果実割合70%以上の果実を生産できる園地は、隣接樹と十分に間隔が保たれている。また、主枝本数が5〜7本程度と少なく、重なりがないように配置され、主幹からの発出角度が25°以下で、横に幅広く伸びている(表1、図1)。また、この主枝上には、1mあたり5本程度の側枝が水平〜斜立ぎみに配置されている。
- 休眠期の3年枝上横向きの花束状短果枝の幅が大きいほど果実品質が高く、短果枝幅の平均が16mm以上の側枝は、果実肥大、着色、糖度とも良好な果実が生産できる(図2)。
- 休眠期の先端1年枝長が20〜30cm の側枝は、安定して幅16mm以上の花束状短果枝が着生し、果実品質が良好な傾向がある。1年枝長が20cm未満の側枝は花束状短果枝の幅が小さく、果実品質が劣る(図2、図3)。
- 休眠期の2年枝径が6〜10mmの側枝は、安定して幅16mm以上の花束状短果枝が着生し、果実品質が良好な傾向がある(図2、図3)。
[成果の活用面・留意点]
- 普及対象:オウトウ生産者
- 普及予定地域・普及予定面積:「佐藤錦」栽培地域(3,000ha)
- その他:
- 山形県東根市(2園地)、寒河江市(2園地)、天童市(3園地)、寒河江市(園芸試験場内)の8園地(計25樹)で調査を行った。このうち、収穫始期に1果重7g以上、糖度18(Brix%)以上、着色70%以上の果実割合70%以上の品質を保持した園地を優良園とした(8園地中2園地)。
- 側枝の配置は、主枝の基部部分は疎に、主枝先端部は密にする。
- 花束状短果枝を上部からみたときの、左右の花芽先端間の長さ(a、bの平均)を花束状短果枝幅とした(下図)。

[具体的データ]




(今部恵里、佐藤光明、原田芳郎、奥山聡)
[その他]
- 研究課題名
- 気象変動に負けないおうとうの高品質安定生産技術の開発
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2011〜2013年度
- 研究担当者
- 今部恵里・佐藤光明・原田芳郎・奥山聡
- 発表論文等
- 今部ら(2014)東北農業試験研究 第67号:印刷中