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山形県庄内地域における完全甘柿4品種の特性

[要約]

山形県庄内地域で、「早秋」は10月中下旬収穫可能で、果色が鮮やかで肉質が緻密である。「甘秋」は11月上中旬収穫可能で、果形が整い、甘味が強い。「太秋」は11月中下旬収穫可能で、大果で果汁が多い。「富有」は12月上中旬収穫可能で、渋が残る。

[キーワード]

甘柿、「早秋」、「甘秋」、「太秋」、「富有」

[担当]

山形県庄内総合支庁産業経済部農業技術普及課・産地研究室

[代表連絡先]

電話0234-91-1250

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

地球温暖化の進展に伴い、これまで山形県ではほとんど栽培されていなかった完全甘柿品種の導入事例が見られている。そこで、樹の生育や果実の食味、脱渋性等を調査し、山形県庄内地域における栽培特性を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 「早秋」(図1図2表1表2
    収穫期は10月中下旬である。果実は約280gとやや大玉で、果形はやや扁平である。果皮は濃い赤橙色に着色し、果頂部と側溝がくぼみやすい。糖度は15.4Brix%で、肉質は緻密で軟らかく食味良好である。種子は1果あたり1.5個で、年次によりわずかに渋が残る。単為結果性、種子形成力ともに低く、生理落果が多い傾向がある。
  2. 「甘秋」(図1図2表1表2
    収穫期は11月上中旬である。果実は約230gで「平核無」と同等で、果形は方形で整い、障害果の発生が少なく、商品果率が高い。種子は3.3個程度含まれる。収穫盛期の果実は渋味がほとんど感じられず、糖度は16.7Brix%で、甘味が強く食味良好である。樹勢は中庸であるが、新梢がやや細く、枝の下垂性が強い。充実不良の結果母枝では、凍害と見られる不発芽が発生する年がある。雄花が着生する。
  3. 「太秋」(図1図2表1表2
    収穫期は11月中下旬である。果実は約390gと「平核無」の2倍程度の大玉で、玉揃いが良い。果皮色は甘柿品種の中ではやや淡い色調で、赤みが少なく「平核無」のような黄橙色である。種子は0.8個で、無核果もある。糖度は16.4Brix%で、果汁が極めて多く食味良好である。肉質はやや粗くサクサクとした食感で、収穫期後半はなめらかな食感となる。着色の淡い果実では渋残りがある。頂部裂果、へたすき果、条紋果等の発生が多く、商品果率が低い。結果樹齢に達すると樹勢が急激に低下する傾向がある。樹勢が低下すると、新梢が短くなり、雄花の着生が増加し、雌花が減少する。
  4. 「富有」(図1表1表2
    果実の成熟が遅く、収穫期は12月上中旬である。果実は約280gとやや大玉で、果形は扁円形である。種子は2.7個程度含まれる。渋味が残り、食味が不良である。へたすき果の発生が多く、商品果率が低い。樹勢が強く、樹姿は開張性である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 普及対象 山形県庄内地域カキ生産者及び普及指導員、農協営農担当者
  2. 普及予定地域・普及予定面積 山形県庄内地域カキ生産地域
  3. その他
    1. 甘柿品種の多くは「平核無」に比べて単為結果性が劣るため、受粉樹の混植が必要である。
    2. 甘柿の栽培に適する自然条件に関する基準(果樹農業振興基本方針:平成22年農林水産省)では年平均気温13.0度C以上を適地としているが、酒田市浜中の過去10年間の年平均気温は12.4℃である。

[具体的データ]

(明石 秀也、石黒 亮)

[その他]

研究課題名
温暖化に対応した果樹・野菜・牧草・林木の適応性調査
予算区分
県単
研究期間
2010〜2014年度
研究担当者
明石秀也、近野広行、石黒亮、清野仁
発表論文等
なし