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福島県オリジナルのモモ品種「ふくあかり」(モモ福島11号)の育成
[要約]
モモ「ふくあかり」(モモ福島11号)は、「川中島白桃」に「モモ福島8号」を交配し、選抜・育成した7月下旬(育成地)に収穫可能な早生品種で、着色が良く、同時期の「暁星」より大玉であるなど果実品質に優れる栽培しやすい品種である。
[キーワード]
モモ、交雑育種、早生品種、果実品質
[担当]
福島県農業総合センター果樹研究所・栽培科
[代表連絡先]
024-542-4191
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
福島県のモモは、全国第2位の生産量を有するが、栽培面積のうち中生品種「あかつき」が54%、晩生品種「川中島白桃」が14%を占めており、収穫労働力の確保や共同選果場の効率的な運営等の観点から、早生品種の導入が求められている。これまで、福島県の早生品種は「日川白鳳」や「暁星」等が栽培されているが、小玉等の問題からその割合は少なく、品質および栽培性に優れ、市場競争力の高い福島県独自のモモ早生品種の育成が望まれている。
[成果の内容・特徴]
- モモ「ふくあかり」(モモ福島11号)は、1999年に「川中島白桃」に「モモ福島8号」(「モモ福島8号」は「ゆうぞら」×「ちよひめ」)を交配して育成した。
- 開花期は「暁星」、「あかつき」とほぼ同時期で、花粉を有する。成熟日数(満開〜収穫盛期)は98〜99日と「暁星」より2〜3日長く、「あかつき」より5〜6日短く、育成地(福島市飯坂町)において7月下旬から収穫できる(表1)。
- 果形は扁円形で、果重は250〜300g程度と早生種としては大玉である(表1)。着色は、はじめ縞状となり、「暁星」と比較してやや遅い傾向があるものの、収穫期には全面に着色する(図1)。肉質は中程度で繊維が少し感じられるが、多汁であり、糖度は12〜14°Brixと甘味が多く、食味良好である(表1)。果肉内に紅色素がみられるが、みつ入りはほとんど認められない。果皮の裂果がわずかにみられることがある。
- 核割れは少なく、玉揃いは良く、収穫前落果が少ないことから、栽培は容易である。
- 樹勢は中程度で、樹冠の広がりは「暁星」、「あかつき」よりやや小さい。
- モモ生産者、関係機関、団体職員等をパネリストとした官能検査では、「暁星」を基準として、外観の好み、着色の好み、肉質は劣るものの、果形、甘味、甘酸バランス、食味などで優れた(図2)。
[成果の活用面・留意点]
- 「ふくあかり」を導入することで、福島県のモモの品種構成を改善し、生産拡大が期待できる。
- 着色が良いことから、反射シートの設置期間が長いと暗赤色になりやすいため、敷設時期に注意する。
- 樹形の形成に当たっては、主枝を下垂させないように適宜切り返しを行い、養成する。
- 現在、品種登録出願中(出願公表2014年5月)である。また、苗木の配布は県内限定である。
[具体的データ]



(赤井広子、岡田初彦、志村浩雄)
[その他]
- 研究課題名
- モモの交雑・選抜による育種
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 1990〜2012年度
- 研究担当者
- 赤井広子、佐藤守、岡田初彦、小野勇治、大橋義孝、木幡栄子、山口奈々子、斎藤祐一