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レタス根腐病被害軽減を目的とした転炉スラグ施用時の肥培管理法
[要約]
レタス根腐病被害軽減を目的に転炉スラグを用いて土壌pHを7.5程度に高めた場合には、施用後2年目までは地力窒素発現量が増加するため、窒素施肥量を25〜50%減肥しても収量は慣行栽培と同等となる。また、土壌の有機物が減少しやすくなるため、堆肥や緑肥の施用が望ましい。
[キーワード]
転炉スラグ、pH矯正、地力、減肥栽培、レタス
[担当]
青森県産業技術センター農林総合研究所・生産環境部
[代表連絡先]
電話0172-52-4391
[区分]
東北農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
転炉スラグにより土壌pHを7.5程度に高めると、微量要素欠乏を発生させることなく、フザリウム性土壌病害であるレタス根腐病の被害を軽減できることが明らかになっている。一般に、土壌pHを高めるとアルカリ効果により地力窒素発現量が増加するとされているが、高pH条件下での地力変化やそれに応じた施肥管理法についての試験事例は少ない。そこで、転炉スラグでpHを高めた場合の地力変化に応じた肥培管理法を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 転炉スラグを施用して土壌pHを7.5程度に高めると、地力窒素発現量が増加するため(図1)、施用後2年目までは転炉区(標肥)の窒素吸収量はpH矯正を行わない対照区(標肥)よりも多くなる(図2)。3年目には、転炉区の跡地のpHが7.0に低下したこともあり、転炉区(標肥)の窒素吸収量は対照区(標肥)と同程度である。
- 転炉スラグ3.6t/10aの施用によりリン酸は約76kg、カルシウムは1380kgと多量に施用されるため、転炉区のリン酸吸収量とカルシウム吸収量は対照区に比べて多くなる(図2)。
- 転炉スラグ施用によるpH矯正後2年間は窒素施肥量を25〜50%減らしても、慣行栽培と同等の収量となる(表1)。3年目に、転炉区で窒素減肥すると慣行栽培の収量を下回る場合がある。
- 土壌pHを高めると土壌有機物の分解が促進されるため、施用後2年間の調査では土壌炭素含有率の年あたり減少量が大きくなる(図3)。地力を維持するためには、堆肥や緑肥による有機物の施用が望ましい。
[成果の活用面・留意点]
- 土壌pHを矯正する場合には、必ず当該圃場の土壌を使って緩衝曲線を作成して施用量を決定する。改良手順は「転炉スラグによる土壌pH矯正を核としたフザリウム性土壌病害の耕種的防除技術の開発」研究成果集を参考にする。
- 本研究で、転炉スラグには(株)ミネックスのてんろ石灰(粉状)を使用した。てんろ石灰3.6t/10aを施用する場合の資材費は115,020円(マグネシウム欠乏対策としての水マグ100kg/10aを含む)で、散布にはライムソワーが適する。転炉スラグに含まれる主な成分は以下の通りである。カルシウム38%、マグネシウム8.8%、ケイ酸15%、リン酸2.1%、鉄26%、マンガン5.0%、ホウ素0.01%。
- 本成果は、レタス根腐病が発生していない褐色低地土で得られた結果である。土壌の有機物量や矯正前のpHによっては窒素減肥量が変わる可能性がある。
- 硫酸根、塩素根を含まない肥料(例:燐硝安加里肥料、被覆燐硝安加里肥料、被覆尿素肥料など)を用いると、肥料の影響による土壌の酸性化を軽減できる。
[具体的データ]




(地方独立行政法人 青森県産業技術センター 農林総合研究所)
[その他]
- 研究課題名
- 転炉スラグによる土壌pH矯正を核としたフザリウム性土壌病害被害の耕種的防除技術の開発
- 予算区分
- 競争的資金(農食事業)
- 研究期間
- 2012〜2014年度
- 研究担当者
- 谷川法聖、米村由美子、門田育生(東北農研)
- 発表論文等
- 農研機構(2015)「転炉スラグによる土壌pH矯正を核としたフザリウム性土壌病害被害の耕種的防除技術の開発」研究成果集