研究所トップ研究成果情報平成26年度

山形県内における農業用水のケイ酸濃度には1996年に比べて大きな変化はない

[要約]

山形県内の農業用水のケイ酸濃度は、1956年から1996年にかけて減少したが、1996年から2014年にかけては変化が小さく、1996年と2014年の濃度には相関関係が認められる。農業用水によるケイ酸供給量の平均値は水稲茎葉のケイ酸吸収量の23.7%に相当する。

[キーワード]

水稲、農業用水、ケイ酸供給量

[担当]

山形県農業総合研究センター・食の安全環境部

[代表連絡先]

電話023-647-3500

[区分]

東北農業・生産環境(土壌肥料)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

ケイ酸は水稲の安定生産に欠かせない栄養成分で、土壌やケイ酸資材、農業用水等から供給される。県内の農業用水のケイ酸は、1996年の濃度が1956年に比べてほぼ半減していることが報告されているが(熊谷ら1998)、その後県内全域での調査は行われていない。現状を把握し効果的な土づくりに役立てるため、農業用水のケイ酸供給力を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 山形県内4地域別の農業用水のケイ酸濃度は、1956年(県平均23.9 mg SiO2/L)から1996年(同10.2 mg SiO2/L)にかけて顕著に減少したが、1996年から2014年(同11.3 mg SiO2/L)にかけては変化が小さい(表1図1)。
  2. 各最寄地点における1996年の濃度と2014年の濃度には相関関係が認められ、前回の調査から大きく減少した地点は認められない(図2)。
  3. 農業用水に由来する水稲作付期間のケイ酸供給量の県平均値は、2014年において15.6 kg SiO2/10aと見積もられ、1996年の値(14.2 kg SiO2/10a)と比較して変化は小さい(表2)。農業用水によるケイ酸供給量の平均値は水稲茎葉のケイ酸吸収量の23.7%に相当する。
  4. 年次と地域による変異を考慮しても、農業用水のケイ酸供給量は水稲のケイ酸吸収量よりも小さい。1996年の調査時と比べて農業用水の実態は大きく変化しておらず、水稲のケイ酸吸収は農業用水以外に土壌やケイ酸資材の施用に大きく依存する。

[成果の活用面・留意点]

  1. 採水時期は2014年7月下旬〜8月中旬である(1956年は7〜8月、1996年は8月)。ケイ酸濃度は採取した試料水をろ過後モリブデン青法により測定した。ケイ酸供給量の推定手法は熊谷ら(山形農事研報2004)による。
  2. 水稲作付期間の用水ケイ酸供給量は、この期間の農業用水のケイ酸濃度の変動は小さいことが報告されていることから(宮崎ら2009等)、採水時の濃度により概算した値である。
  3. 今後とも山形県内の全域において、ケイ酸収支に応じたケイ酸施用を継続していく必要がある。

[具体的データ]

(松田 晃)

[その他]

研究課題名
土壌機能増進対策調査
予算区分
県単
研究期間
2014年度
研究担当者
松田 晃、塩野宏之、熊谷勝巳