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春耕前の水田作土培養のメタン生成量と実ほ場発生量には高い相関がある

[要約]

秋季稲わらすき込み水田における春耕3〜12日前の作土生土を用いた8週間培養試験によるメタン生成量は、実ほ場でのメタン発生量と高い相関があり、土壌のメタン生成ポテンシャルの評価に活用できる。

[キーワード]

メタン、土壌培養、メタン生成ポテンシャル、遊離酸化鉄

[担当]

福島県農業総合センター・生産環境部

[代表連絡先]

電話024-958-1718

[区分]

東北農業・生産環境(土壌肥料)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

秋季の稲わらすき込み時の耕起深を浅くする浅耕耕耘は、水稲作でのほ場から発生するメタンガスを減少させる耕起方法として期待される(2012年度研究成果情報)。その効果を解析するため、秋季に浅耕耕耘を行いメタン発生量を測定した国内6水田ほ場について、春耕前の作土の培養によるメタン生成量を測定し、ほ場発生量との関係を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 秋季に稲わらすき込みを実施した国内6ほ場(表1)において春耕3〜12日前に採取した作土生土を試験管培養して得られるメタン生成量(kg C /ha/ day)は、実ほ場でのメタン発生量(kg C /ha)と高い相関があり、土壌のメタン生成ポテンシャルの評価に活用できることを示す(図1)。
  2. 土壌のメタン生成ポテンシャルは、遊離酸化鉄含量が少ないほど、また、易分解性有機物含量が多いほど大きいと考えられるが、今回の培養結果において、すき込み稲わらの密度が低い処理区・層位ほど遊離酸化鉄含量によりメタン生成が抑制される程度は大きく、妥当な結果となっている(図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 今回の培養試験の手法を発展させることで、水田からのメタン発生量の広域評価、削減効果の評価等に活用できる可能性がある。
  2. 今回の研究で行った土壌の採取方法、培養方法は次のとおりである。土壌採取方法:内径5cm、高さ15cmの円筒を用い1処理区から1サンプル採取し、中央で円筒を切断し、切断円筒中央厚さ3cmの部位の土壌をそれぞれ「上層」、「下層」土壌とし、それぞれ培養に供試した。培養方法:礫・未朽粗大有機物を除去するために2mm目の篩いを通した生土状態の土壌5g、水5mlを耐圧試験管(約30ml容積)に入れ、ヘッドスペースをアルゴンガスで置換した。その後、密栓し、30度Cで8週間静置培養し、メタン生成能(mg C/kg/day)を求めた。培養は1サンプル1点(反復なし。今回採取した圃場での処理区は3反復。)で行った。
  3. 図1のメタン生成量は、各サンプルのメタン生成能と仮比重、層位の深さから求めた。

[具体的データ]

(福島県)

[その他]

研究課題名
水田における温室効果ガス排出削減・吸収機能向上技術の開発
予算区分
委託プロ(気候変動)
研究期間
2009〜2014年度
研究担当者
中山秀貴、当真要(愛媛大学)