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生育期間中の水抽出カリ含量に基づく玄米中放射性セシウム濃度の推定
[要約]
作付け前の水抽出カリ含量が3mg/100g乾土以上、中干し前および収穫後の水溶性カリ濃度が2mg/100g乾土以上であれば、玄米中放射性セシウム濃度が基準値以下となる。水稲の生育ステージ毎の玄米中放射性セシウム濃度の基準値超過リスクを診断できる。
[キーワード]
土壌中水抽出カリ含量、放射性セシウム、玄米
[担当]
福島県農業総合センター・生産環境部
[代表連絡先]
電話024-958-1718
[区分]
東北農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
放射性セシウムに汚染された地域では、玄米中の放射性セシウム吸収を抑えるため、通常施肥に上乗せしてカリ施用が行われている。一方、低レベルの放射性セシウム汚染地域では通常施肥以外のカリ施用量の削減に向けた対策が進められている。このため、カリ不足による玄米中の放射性セシウムの基準値超過を回避するため、水稲の生育時期に対応したカリの適正な指標値の設定が必要である。土壌溶液では田面水のない作付前や収穫後の時期の採取が難しいことから水稲の生育ステージ毎の土壌中水抽出カリ含量から玄米中放射性セシウム濃度を推定できる基準値を提案する。
[成果の内容・特徴]
- 土壌中水抽出カリ含量の測定方法は、以下に示すとおり。
- 風乾土を蒸留水(固液比1:10)で1時間振とう抽出、ろ液を0.45 μmのメンブランフィルターでろ過する。
- 抽出液のカリウムイオン濃度を原子吸光光度計で測定し、乾土100g 当たりのK2O含量に換算する。
- 土壌中水抽出カリ含量は経時的に緩やかに減少するため、生育ステージ毎に診断値を設定する必要がある(図1)。
- 土壌の異なるほ場で栽培した場合や作付年次が異なる場合でも、作付前の水抽出カリ含量を3mg/100g乾土、中干し前および収穫後の水抽出カリ含量を2mg/100g乾土以上に維持されれば、玄米中放射性セシウム濃度は基準値以下に低減できる(図2)。
[成果の活用面・留意点]
- 水稲の作付け期間中に玄米中放射性セシウムの基準値超過を診断できる。
- 試験地の土壌は試験地1が多湿黒ボク土、試験地2および試験地3は灰色低地土である。土壌中放射性セシウム濃度は試験地1が3419〜5674 Bq/kg、試験地2が3126〜9189 Bq/kg、試験地3が1271〜2444 Bq/kgである。いずれも2011年〜2013年産の玄米から高濃度の放射性セシウムが検出されたほ場である。
- このデータは3ほ場に異なる量のカリ肥料や資材を施用したものである。
- 水稲の作付期間は試験地1が2012年5月10日〜9月19日、試験地2が2012年5月23日〜10月9日、2013年5月21日〜9月29日、試験地3が2013年5月22日〜9月16日である。
[具体的データ]


(福島県)
[その他]
- 研究課題名
- 高濃度汚染地域における農地土壌汚染技術体系の構築・実証
- 予算区分
- 委託プロ(除染プロ)
- 研究期間
- 2013〜2014年
- 研究担当者
- 齋藤 隆、高橋和平、片桐優亮、齋藤 隆(福島農総セ浜地域研)太田 健(東北農研)、牧野知之(農環研)
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