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飼料用とうもろこしの耕うん同時畝立て播種技術の現地実証
[要約]
アップカットロータリーの耕うん爪配列を変えるだけの簡単な調整で、高さ10cm程度の畝を形成できる。そのため播種位置が高くなり、相対的に地下水位が低下することから、湿害の回避や軽減に効果的である。圃場条件が良好な場合においても慣行栽培に比較して増収効果が認められる。
[キーワード]
飼料用とうもろこし、耕うん同時畝立て播種、湿害
[担当]
宮城県畜産試験場 草地飼料部
[代表連絡先]
電話0229-72-3101
[区分]
東北農業・畜産飼料作
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
本県における平成24年度の飼料用トウモロコシ栽培面積は1,410haで、うち148ha(10.4%)は水田利用であり水田は重要な飼料生産基盤であるが、飼料用トウモロコシは耐湿性が低く「湿害」により水田転作での収量は低い傾向にある。一方、大豆作においては「耕うん同時畝立て播種技術(以下「本技術」)」の開発により湿害回避技術が確立していることから、本技術の飼料用トウモロコシ栽培への適応性について検討し、多湿圃場における安定生産を目指す。
[成果の内容・特徴]
- 試験は飼料用トウモロコシ+イタリアンライグラスの二毛作体系で実施した。試験ほ場は水田転換畑で、隣接水田から田面水等の横浸透が著しい状況にある。今回はこの試験ほ場中央部に明渠を施工し、常時多湿な状態にある隣接水田側を多湿区、適度な土壌水分条件側を通常区と大別し、それぞれに本技術導入区と慣行栽培区(ダウンカットロータリー+ジェットシーダー)を設置した。また、多湿区には湿害対策の基本技術となる弾丸暗渠や明渠を併用した基本技術励行区(本技術導入+弾丸暗渠+明渠)も設置し、延べ5試験区で実施した。
- 図1は本技術の核となるアップカットロータリーの耕うん爪配列について示した。PTO軸延長線上を中心に、その両端の配列を変更することにより山盛り耕ができ、それは作業幅に応じて2〜3山盛り耕となる。なお、畝の幅や高さは均平板の押しつけ力調整により任意に変更できる。
- 図2は試験ほ場における土壌体積含水率(以下「含水率」)の推移や降水量について示した。本技術の特徴である畝の形成による地下水位の相対的な低下と、それに伴う含水率の低下が多湿区、通常区ともに明瞭であり、本技術の有効性が確認できる。また、基本技術の励行による積極的な排水対策を併用することにより、その効果はより大きくなる。
- 収量調査結果を表1に示した。多湿区の乾物収量は本技術導入により慣行栽培比4.39倍、通常区においても同1.32倍と、本技術が多湿条件のみならず、通常条件下での有効性も確認された。さらに、基本技術励行区は多湿・慣行区の8倍程度、通常・慣行区の1.4倍となり、積極的な排水対策を講じる必要性が理解できる。なお、これらは先述の相対的な地下水位効果により根系への酸素供給が継続されたとともに、土壌が還元状態となることを防ぎ、硫化水素やエチレン等の根系成長阻害因子の生成を抑制できた結果と推測できる。
- 表2には本技術導入に際しての費用を示した。アップカットロータリーはロータリー軸への耕うん爪取付方法によりフランジ型とホルダー型に大別できるが、フランジ型では耕うん爪の配列変更は構造上不可能となっているものの、ロータリー軸等を交換することにより本技術の導入が可能となる。
[成果の活用面・留意点]
- 過度な湿潤圃場では労力の増加や収量の低迷により、飼料生産にかかる費用対効果は低下するとともに、除草剤散布(茎葉処理剤)に支障を来すことが想定される。
- 常時湿潤状態ではなく、降雨等による一時的な冠水等による生育遅延対策として有効と考える。
- ロータリー軸等の交換に際しては十分な安全確保が必要である。また、交換の可否はメーカーや型式により異なる。
- アップカットロータリーの砕土性は良好で、二毛作体系に支障は見られない(データ無し)。
[具体的データ]




(宮城県畜産試験場草地飼料部)
[その他]
- 研究課題名
- 飼料用とうもろこしの耕うん同時畝立て播種技術の現地実証
- 予算区分
- 委託プロ(国産飼料)
- 研究期間
- 2008〜2014年度
- 研究担当者
- 小野寺伸也、遠藤 潤