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汚染牛にゼオライト投与しても放射性セシウムを排出促進することはできない
[要約]
黒毛和種雌牛において、汚染飼料摂取により体内に取り込んだ放射性セシウムは、飼い直し期間中に放射性セシウム吸着資材を飼料に添加し給与しても、体外への放射性セシウムの排出を促進しない。
[キーワード]
黒毛和種、体内放射性セシウム排出、放射性セシウム吸着資材、牛生体放射能測定装置
[担当]
福島県農業総合センター・畜産研究所・肉畜科
[代表連絡先]
電話024-593-1223
[区分]
東北農業・畜産飼料作
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
肉用牛の出荷においては、食品である牛肉における放射性物質の基準値が100Bq/kg以下であることから、継続的に汚染のない安全な飼料給与が望まれている。特に、繁殖和牛を出荷する際には、過去に汚染した飼料を摂取していた可能性もあり、基準値遵守には速やかに体内の放射性物質を体外へ排出することが必要である。このことから、本研究では、黒毛和種雌牛4頭を放射性セシウム吸着効果のあるゼオライト添加の試験区と対照区の2群に分けて反復し、体外に排出される放射性セシウム濃度を測定する。併せて経時的に汚染牛の状況を確認するため、開発した牛生体放射能測定装置を用いて汚染の程度を確認しながら、放射性セシウム吸着資材の体外排出促進効果について明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 放射性セシウムによる牛の汚染程度は、開発した牛生体放射能測定装置により牛体体表から確認することができる(表1)。
- 調製飼料(水分80%換算100Bq/kg調製、7kg/日)を1ヶ月間摂取させた後、放射性セシウムを吸着するゼオライト200gを継続的に添加し、腸肝循環の過程での放射性セシウム吸着による排出促進を狙ったが、尿や糞として体外へ排泄される放射性セシウムの排出は、試験区、対照区ともにほぼ同等の推移で減少し、また血液中の放射性セシウム濃度も吸着資材の添加の有無による差は認められない(表2)。
- 体表から推定した放射性セシウム濃度は、放射性セシウム吸着資材の添加の有無にかかわらず、ほぼ同等に減少していく。牛の体から排泄されて放射能が半分になる生物学的半減期は約8週間であり、国で示している60日とほぼ同等と確認される(図1)。
- 本試験で供試した牛では、飼料中から牛筋肉への放射性セシウムの移行係数は、0.014 〜0.019の範囲となる(表3)。
[成果の活用面・留意点]
- 牛の体内放射性セシウム濃度を推定し、生物学的半減期から出荷時期を特定することが望ましい。
- 牛生体の放射能測定には、2013年度普及成果情報(繁殖和牛生体体表から筋肉中の放射性セシウム濃度を推定する装置)において示した牛生体放射能測定装置を用い、正確に牛の放射性物質濃度を推定できる技術(特許申請中)の活用による。
[具体的データ]




(福島県)
[その他]
- 研究課題名
- 肉用牛における体内放射性セシウムの排出促進技術の確立
- 予算区分
- 繰入金(福島県民健康管理基金繰入金)
- 研究期間
- 2013〜2014年度
- 研究担当者
- 石川雄治、矢内伸佳、渡邊鋼一、古閑文哉、内田守譜、佐藤亮一