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くず大豆および大豆ホールクロップサイレージは発酵TMR原料として有用である

[要約]

くず大豆および黄葉中期に調製した大豆ホールクロップサイレージを、大豆粕等の輸入タンパク質飼料の代替として用いた発酵TMRは、泌乳牛に給与しても産乳性は代替前と変わらない。また飼料中の植物性エストロゲン含量にも変化はみられない。

[キーワード]

くず大豆、大豆ホールクロップサイレージ、発酵TMR、産乳性

[担当]

東北農業研究センター・畜産飼料作研究領域、岩手県農業研究センター畜産研究所

[代表連絡先]

電話019-643-3543

[区分]

東北農業・畜産飼料作

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

輸入飼料の価格は高止まりしており、自給率向上が酪農家経営安定化のための重要な課題となっている。大豆粕等に代表される高タンパク質飼料は、乳牛飼養に不可欠な飼料として広く利用されているが、自給率がきわめて低い飼料のひとつである。そこで、肥料等として安価に流通している国産のくず大豆や、今後自給飼料として有望な大豆ホールクロップサイレージを、新たなタンパク源とした発酵TMRの泌乳牛用飼料としての価値を評価する。

[成果の内容・特徴]

  1. くず大豆で大豆粕由来タンパク質中の10〜30%を代替した発酵TMRを泌乳牛に給与しても乳量、乳成分、乾物摂取量に影響はない(表1表2)。
  2. くず大豆で大豆粕由来タンパク質中の30%を代替すると、発酵TMRの飼料自給率はTDNベースで60%から63%に向上するが(表1)、繁殖性に影響するとされる飼料中の植物性エストロゲン含量は代替前と変わらない(図1)。
  3. 黄葉中期に調製した大豆WCSを飼料乾物中10〜20%混合した発酵TMRを乳牛に給与しても乳量、乳成分、乾物摂取量に影響はない(表1表2)。
  4. 黄葉中期に調製した大豆WCSを飼料乾物中20%混合すると、発酵TMRの飼料自給率はTDNベースで54%から65%に向上するが(表1)、繁殖性に影響するとされる飼料中の植物性エストロゲン含量は代替前と変わらない(図1)。
  5. くず大豆および黄葉中期に調製した大豆WCSは飼料自給率の高い発酵TMRの原料として有用である。

[普及のための参考情報]

  1. 普及対象:地域TMRセンター・乳牛飼養農家
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:関東地域北部〜東北地域
  3. その他:大豆WCSの栽培・調製方法については「若刈牧草とホールクロップサイレージ大豆の連続栽培による高タンパク質飼料生産」(農研機構2014年度普及成果情報)を参照されたい。

[具体的データ]

(越川志津、嶝野英子)

[その他]

研究課題名
寒冷地の土地資源を活用した自給飼料の省力・省資源・生産利用技術の開発
予算区分
交付金、委託プロ(国産飼料)
研究期間
2008〜2014年度
研究担当者
齋藤浩和(現 宮古農改)、越川志津(岩手農研)、嶝野英子、魚住 順、河本英憲、内野 宙、出口 新
発表論文等
1)齋藤ら(2015)岩手農研セ研報、14 受理
2)Touno E. et al. (2014) Anim. Sci. J. 85:46-52