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リンゴ直接販売における顧客獲得のための「おすそわけ袋」活用ビジネスモデル

[要約]

直接販売を行うリンゴ作経営では、消費者のおすそわけ行為を利用した顧客獲得が有効である。「おすそわけ袋」は商品情報を記載した小分け袋で、商品に同梱することでおすそわけ先の消費者に商品のPRを行い、新規顧客獲得につなげることができる。

[キーワード]

リンゴ、直接販売、おすそわけ、商品情報、新規顧客

[担当]

経営管理システム・ビジネスモデル

[代表連絡先]

電話029-838-8875

[研究所名]

東北農業研究センター・生産基盤研究領域

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

直接販売を行うリンゴ作経営では、贈答用需要が重要な位置を占める。消費者が行う贈答やおすそわけ行為は「試食つきクチコミ」という効果を持ち、通常であれば生産者が直接アクセスできないような消費者にリンゴが届くため、新たな顧客獲得の絶好の機会となる。そこで、おすそわけ先消費者に商品PRをするとともに、生産者への注文を可能とするツールとして「おすそわけ袋」を考案する。また、販売実験によって消費者による「おすそわけ袋」の利用実態とリンゴ直販における導入効果を明らかにし、「おすそわけ袋」活用ビジネスモデルを提示する。なお、販売実験は消費者への直接販売を行う大規模リンゴ作経営(S経営)が発送するリンゴ箱に「おすそわけ袋」を同梱して実施している。

[成果の内容・特徴]

  1. 「おすそわけ袋」はリンゴを贈答された消費者が、おすそわけをする際に利用する小分け袋である。おもて面に商品のロゴマークを、うら面に商品の解説と生産者の連絡先を記載することで、おすそわけ先の消費者に商品のPRをすることができる(図1)。
  2. 販売実験とあわせて実施した消費者アンケート調査では、回答者の87%がおすそわけをしており、そのうちの85%が「おすそわけ袋」を利用したという結果を得ている。また、おすそわけをした相手の人数は2〜3人、1人当たりの個数は3〜5個が多く、この結果から「おすそわけ袋」に適したサイズや配布枚数を想定することができる(図2)。
  3. S経営が「おすそわけ袋」を配布したシーズン中の新規注文のうち、「おすそわけ袋」を見て注文してきたことが確認できたものは、関東地方や東北地方を中心に21件、114箱である(表1)。このように、「おすそわけ袋」はおすそわけ先の消費者に商品や生産者の情報を直接伝達し、購買意欲を喚起させ、生産者へとつなぐルートを形成することができる。
  4. 「おすそわけ袋」活用ビジネスモデルは、おすそわけ先の消費者Cをターゲットにした販売戦略モデルである(図3)。これまでも、リンゴ箱にチラシ類を同梱することで贈答された消費者Bを新規顧客として獲得することは可能であったが、この方法ではおすそわけ先の消費者Cには商品情報が届かない。「おすそわけ袋」を活用することで、消費者Bがおすそわけをする際の利便性を高めるとともに、消費者Cに商品と商品情報をセットで届けることができるようになる。これにより、おすそわけ先の消費者Cを新たな顧客として獲得することが可能となる。

[普及のための参考情報]

  1. 普及対象:消費者への直接販売を行うリンゴ作経営
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:リンゴ生産地域を中心に50経営
  3. その他:導入済み経営2、使用問い合わせ2、自治体による取り組み1、試験導入経営4(青森、岩手)、試験導入自治体2(弘前市、板柳町)

[具体的データ]

(磯島昭代、長谷川啓哉)

[その他]

中課題名
地域農業を革新する6次産業化ビジネスモデルの構築
中課題番号
114b0
予算区分
交付金、競争的資金(科研費)
研究期間
2010〜2014年度
研究担当者
磯島昭代、長谷川啓哉
発表論文等
磯島(2013)農村経済研究、31(1):25-32