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寒締め栽培によりホウレンソウのフラボノイドと抗酸化能は増加する
[要約]
ホウレンソウを寒締め栽培することにより、フラボノイド含量が増加するとともに抽出物のH-ORAC値が増加する。フラボノイドは、低分子のモノ及びジグルコシドが増加するなど組成が変化する。
[キーワード]
ホウレンソウ、寒締め栽培、フラボノイド、抗酸化能
[担当]
食品機能性・代謝調節利用技術
[代表連絡先]
電話029-838-8041
[研究所名]
東北農業研究センター・生産基盤研究領域
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
ホウレンソウは、東北地域の冬の寒さを利用した寒締め栽培により糖及びビタミン含量などが増加し、食味や栄養性の向上など高品質化することが知られている。植物に対する低温ストレスは酸化ストレスを引き起こすが、寒締め栽培による抗酸化化合物のフラボノイドや抗酸化能(H-ORAC値)の推移は、明らかにされていない。本研究では、ホウレンソウ3品種(「朝霧」「まほろば」「若草」)の寒締め栽培におけるフラボノイド含量と組成、抽出物の抗酸化能の変化を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- ホウレンソウの総フラボノイド量は、ビニールハウス内で出荷サイズまで生育させた後の寒締め栽培により、栽培期間中顕著に増加する。寒締め前(2011.12.1)と比較して寒締め40日後(2012.1.10)で、「朝霧」2.6倍、「まほろば」2.2倍(図1)、「若草」2.4倍)。寒締め処理しない対照では増加しない。
- H-ORAC値は寒締め栽培により全品種で顕著に増加するのに対し、非寒締め処理では、2品種(「朝霧」「まほろば」)で2011.12.1(寒締前と同一日)より2012.1.10(寒締め40日後と同一日)で増加するものの両者の差は小さく(図2)、1品種(「若草」)では増加しない。
- ホウレンソウ(3品種)の検出フラボノイド16化合物の中で、全フラボノイド量に占める割合が増加したのは、patuletinのジグルコシド(patuletin-3-glucosyl-(1-6)-glucoside)(寒締め前→寒締め後40日、3.5→10.3%)(図3A)、及び新たに検出されたモノグルコシド(patuletin-3-glucoside)(0.13→4.4%)、(図3B)、spinacetinのジグルコシド(spinacetin-3-glucosyl-(1-6)-glucoside)(2.6→8.6%)(図3C)である。これら化合物は分子内にフェノール酸、アピオース、グルクロン酸などを含まず、ホウレンソウに含まれるフラボノイドとしては低分子量である。
- 増加する3種類以外のフラボノイドでは、patuletin配糖体(4化合物)の割合は概ね一定であり(図3D)、spinacetin配糖体(5化合物)(図3E)、グルクロニド(グルクロン酸を含むフラボン、4化合物)(図3F)は低下傾向にある。
[成果の活用面・留意点]
- 高機能なホウレンソウの生産、及び寒締めホウレンソウを高機能な食品素材として利用する際の知見となる。
- ホウレンソウに含まれるフラボノイド標準品はいずれも市販されていないことから、既報告に準じて、HPLC(350nm)による分析値は入手可能なspiraeoside当量として算出。総フラボノイド量は、各フラボノイド量を合計したもの。
- 寒締め栽培では、慣らし栽培も寒締め栽培日数としてカウントしている。
[具体的データ]
(渡辺 満)
[その他]
- 中課題名
- 代謝調節作用に関する健康機能性解明と有効利用技術の開発
- 中課題番号
- 310b0
- 予算区分
- その他外部資金(地域再生)
- 研究期間
- 2012〜2014年度
- 研究担当者
- 渡辺 満
- 発表論文等
- Watanabe M. and Ayugase J. (2015) J. Sci. Food Agr. 95(10):2095-2104