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すっきりとした酒が製成できる酒造好適米新品種「華さやか」の育成
[要約]
「華さやか」は、青森県での熟期が“中生の晩”の酒造好適米品種で、「華吹雪」に比べ、収量は並かやや多く、玄米千粒重は軽く品質は優れる。耐冷性が“強”、いもち病抵抗性は“極強”である。製成酒はアミノ酸度が低く、すっきりとした酒質になる。
[キーワード]
イネ、華さやか、酒造好適米、いもち病抵抗性、アミノ酸度
[担当]
青森県産業技術センター農林総合研究所・水稲品種開発部
[代表連絡先]
電話0172-52-4312
[区分]
東北農業・稲(稲品種)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
日本酒の消費量は昭和48年をピークに下降の一途をたどり、近年は純米酒や吟醸酒などの特定名称酒は需要を伸ばしているものの、全体としてはピーク時の三分の一近くまで減少している。このような背景の中、酒造メーカーでは新規の消費者層を獲得するため、より多様化した嗜好に沿った特徴のある酒造りが試みられている。また、農家にとっては米価の下落が激しい中、比較的価格が安定している酒造好適米を作付けすることは経営の安定化にとってメリットがある。そこで、既存の酒造好適米品種とは異なる特徴的な醸造適性をもち、栽培特性や玄米品質が優れる酒造好適米品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
- 「華さやか」(旧系統名「青系酒184号」)は、いもち病抵抗性と障害型耐冷性が強く、玄米品質が優れる酒造好適米品種の育成を目標として、1997年に「黒1900」を母、「岩南酒13号(吟ぎんが)」を父として人工交配を行い、その後代から育成した品種である。
- 出穂期は「華吹雪」より2日程度、成熟期は1日程度遅く、育成地では“中生の晩”に属する粳種である(表1)。
- 稈長は「華吹雪」より長い“中稈”で、耐倒伏性は「華吹雪」よりやや劣る“やや 強”、穂長は「華吹雪」並、穂数は「華吹雪」よりやや多く、草型は“穂重型”である(表1)。
- 玄米収量は「華吹雪」並かやや多く、玄米千粒重は「華吹雪」より軽く「華想い」並、玄米品質、検査等級は「華吹雪」、「華想い」より優れる(表1)。心白の発現は「華吹雪」より少なく「華想い」並で、小さい心白の割合が多い(表1)。
- 障害型耐冷性は“強”である。いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia”と推定され、ほ場抵抗性は葉いもち・穂いもちともに“極強”である。穂発芽性は“やや難”である(表1)。
- 製成酒は「華吹雪」、「華想い」に比べアミノ酸度が低く、すっきりとした酒質となる(表2、3)。
[普及のための参考情報]
- 普及対象:青森県内酒米生産者及び県内酒造メーカー
- 普及予定地域・普及予定面積:青森県津軽中央、津軽西北、県南内陸地帯・約25ha
- その他:青森県において第1種認定品種に指定される。
「華さやか」を用いた酒類の製造方法については特許を出願し、公開されているので、
米の使用にあたっては青森県産業技術センターに問い合わせが必要である。
[具体的データ]



(地方独立行政法人 青森県産業技術センター農林総合研究所)
[その他]
- 研究課題名
- 第II期水稲良食味品種早期開発事業及び「売れる青森米」水稲新品種強化育成事業
- 予算区分
- 県単及び県交付金
- 研究期間
- 1997年〜2007年、2009〜2012年
- 研究担当者
- 前田一春、神田伸一郎、上村豊和、須藤充、須藤弘毅、小林渡、三上泰正、川村陽一、高舘正男、館山元春、横山裕正、今智穂美、小林健一、森田衣緒、中堀登示光
- 発表論文等
- 1)須藤ら「華さやか」品種登録出願 2013年9月26日(第28546号)
- 2)齋藤ら「酒類、その製造方法、酒類香味調節方法および酒造用米」 特開2014-187917