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良食味、多収の水稲新品種候補「岩手107号」の育成

[要約]

水稲「岩手107号」は岩手県では“中生の中”に属する粳品種である。食味は「あきたこまち」に優り、耐冷性は“強”、いもち病抵抗性は「あきたこまち」よりも強い。「あきたこまち」より倒伏しにくく、多収である。

[キーワード]

イネ、岩手107号、良食味、耐冷性、耐病性

[担当]

岩手県農業研究センター・技術部

[代表連絡先]

電話0197-68-4417

[区分]

東北農業・稲(稲品種)

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

岩手県の中生粳水稲品種は1987年に奨励品種に採用された銘柄米「あきたこまち」が主力である。しかし、「あきたこまち」は耐冷性、いもち病抵抗性および耐倒伏性が不十分である。そこで、栽培特性に優れた良食味品種を育成する。

[成果の内容・特徴]

  1. 水稲「岩手107号」は、岩手県農業研究センターにおいて「耐冷性“強”で、いもち病抵抗性と良食味性をもつ水稲品種の育成」を目的として、2006年に「奥羽400号」を母、「北陸208号」を父として人工交配し、その後代から育成した品種である(表1)。
  2. 育成地における出穂期は「あきたこまち」より3〜4日遅く、「どんぴしゃり」より1〜2日早い。成熟期は「どんぴしゃり」並から1日早く、岩手県では“中生の中”(寒冷地中部で“やや早”)に属する(表1)。
  3. 稈長は「あきたこまち」より短い。穂長は「あきたこまち」より長い。穂数は「あきたこまち」より少ない。耐倒伏性は“やや強”で「あきたこまち」に優る(表1)。
  4. 障害型耐冷性は“強”で、「あきたこまち」に優る(表1)。
  5. いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia, Pii, Pik”をもつと推定され、葉いもち圃場抵抗性は“中”、穂いもち圃場抵抗性は“やや強”で「あきたこまち」に優る。穂いもち圃場抵抗性遺伝子Pb1をもつと推定される。
  6. 玄米収量は「あきたこまち」より多収である(表1)。
  7. 斑点米の要因となる割れ籾は「あきたこまち」より少ない(表1)。
  8. 玄米外観品質は「あきたこまち」並に優れる(表1)。
  9. 食味は「あきたこまち」に比べ、炊飯米は粘り、味が良く、総合評価も優れる(表2)。
  10. 白米タンパク質含有率は「あきたこまち」より低い(表1)。

[普及のための参考情報]

  1. 普及対象:岩手県内の生産者
  2. 普及予定地域:盛岡市(玉山区含む)以南から北上市以北の標高240m以下の平坦部、及び旧宮古市以南の沿岸部標高100m以下の20,000haにおいて普及を見込んでいる。
  3. その他:なし

[具体的データ]

(岩手県農業研究センター技術部)

[その他]

研究課題名
主食用米等水稲品種の育成
予算区分
県単、令達
研究期間
2008〜2014年
研究担当者
菅原浩視、仲條眞介、野々上慈徳、小舘琢磨、川代早奈恵、太田裕貴、小綿寿志、阿部陽、遠藤(及川)あや、中野央子、高草木雅人、佐々木力、木内豊
発表論文等
なし