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耐冷性に優れる多収の水稲新品種候補系統「東北211号」の育成
[要約]
「東北211号」は宮城県において極晩生の粳種で、耐冷性が“極強”、 耐倒伏性が“強”であり、粗玄米重は「げんきまる」並の多収である。玄米千粒重が約27gと大きく、乳白粒、腹白粒が多いため、主食用品種との識別性があり飼料用米に適する。
[キーワード]
水稲、東北211号、耐冷性、多収、飼料用米
[担当]
宮城県古川農業試験場・作物育種部
[代表連絡先]
電話0229-26-5105
[区分]
東北農業・稲(稲品種)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
2014年産米の急激な米価の下落により、稲作農家を取り巻く経営環境は一段と厳しさを増している。現在、国は飼料用米生産に対する助成制度を拡充しており、本制度は水田を有効活用して国産飼料を安定供給しながら、稲作経営を支える重要な施策となっている。
現在、宮城県では、飼料用米の専用品種として「ふくひびき」、「夢あおば」が利用されているが、これらの品種は、障害型耐冷性が“弱”であり、安定生産を図っていく上で克服すべき課題となっている。そこで、耐冷性に優れる多収品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
- 晩生で収量性に優れる水稲品種の育成を目標に、「東北189号(げんきまる)」を母、極大粒の多収品種「クサユタカ」を父として、2006年に交配し、その後代を選抜、固定を図ってきた系統である(表1)。
- 出穂期は「げんきまる」より2日遅く、成熟期は4日遅い、宮城県では極晩生である(表1)。
- 稈長は「げんきまる」よりやや短く、穂長はやや長く、穂数はやや少なく、草型は偏穂重型である(表1)。
- 粗玄米重は73.3kg/aと「げんきまる」並に多収で、「クサユタカ」よりやや劣る。玄米千粒重が約27gと大きく、乳白粒や腹白粒が多いため、「げんきまる」等の主食用品種との識別性がある(表1)。
- 障害型耐冷性は、不稔歩合が「クサユタカ」より低く、晩生の基準品種「コシヒカリ」(耐冷性“極強”)とほぼ同程度の「極強」である(表1、図1)。
- いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pib”と推定され、葉いもち、穂いもち圃場抵抗性はともに“不明”である(表1)。
- 脱粒性は“難” 、穂発芽性は“難”である(表1)。
- 白米のタンパク含有率は、「げんきまる」や「クサユタカ」に比べてやや低い(表1)。
- 稈の強度は、第3、4節間ともに挫折強度が「げんきまる」や「クサユタカ」より強く、稈の太さも「げんきまる」や「クサユタカ」より太く、耐倒伏性は“強” である(表1、図2)。
[普及のための参考情報]
- 普及対象:宮城県内
- 普及予定地域・普及予定面積:宮城県北部・南部平坦地に800ha
- その他:多収性専用品種として、平成26年4月に東北農政局に申請し、知事特認品種として認められた。今後、飼料用米の専用品種として利用する見込みである。
[具体的データ]
(宮城県古川農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 水稲品種の育成(県単)、耐冷性やいもち病抵抗性を強化した東北オリジナル業務・加工用多収品種の開発(農食事業)
- 予算区分
- 指定試験(2006〜10年度)、県単・農食事業(2011〜2014年度)
- 研究担当者
- 遠藤貴司、佐伯研一、佐藤浩子、中込佑介、永野邦明、佐々木都彦、千葉文弥、我妻謙介、早坂浩志、酒井球絵(宮城古川農試)
- 発表論文等
- 平成26年度品種登録出願予定。