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津波被災後復旧田の水稲作における省力的なコウキヤガラの防除対策
[要約]
津波被災水田等のコウキヤガラが多発する水稲作では、ピラクロニルとメタゾスルフロン、ピリミスルファン、プロピリスルフロン、アジムスルフロンといったALS阻害剤を含む除草剤が有効で、少量投げ込みや無人ヘリ利用等の省力的散布も可能である。
[キーワード]
津波被災農地、コウキヤガラ、水稲用除草剤、省力散布
[担当]
宮城県古川農業試験場・水田利用部
[代表連絡先]
電話0229-26-5106
[区分]
東北農業・稲(稲栽培)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
東日本大震災大津波の被害を受けた水田では、復旧までの休耕や復旧工事に伴う土壌の移動により、以前から難防除雑草として問題となっていたコウキヤガラの繁茂や分布の拡大が確認され、有効な防除対策が求められている(大川ら2012)。また、復旧農地の大区画化や担い手への農地集積が進み、効率的で省力的な雑草防除の方法も求められている。
そこで、コウキヤガラの多発リスクの高い復旧後初年目の水稲作付け地域の実規模圃場において、これまで小規模試験や東北以外の地域を中心に有効性が確認されてきた少量拡散性剤や無人ヘリ散布可能剤を中心とした水稲用除草剤の防除効果について検証する。
[成果の内容・特徴]
- 2014年に水稲の作付けを開始した津波被災後復旧農地では、3年間の休耕と復旧工事に伴う土壌の移動により、10aあたり数百株の密度でコウキヤガラが地域全体に蔓延している(図1)。このような地域においても、水稲用除草剤12種の単用一発処理および3種の体系後処理によりコウキヤガラの防除は可能であり(図2)、必ずしもベンタゾン液剤等による追加防除を要しない。
- 同様に復旧後初年目の水稲移植後に,10aあたり数千〜2万株の高密度でコウキヤガラが残草している地域においても、水稲用除草剤4種を体系後処理剤として散布することで、残草株および後発株が抑制され、高い防除効果が得られる(図3)。
- コウキヤガラに対して効果の高い水稲用除草剤は、有効成分としてピラクロニルとメタゾスルフロン、ピリミスルファン、プロピリスルフロン、アジムスルフロンといったALS(アセト乳酸合成酵素)阻害剤を配合した混合剤であり、少量投げ込み散布に対応したジャンボ剤や豆つぶ剤等の拡散性製剤、無人ヘリコプター散布に対応した剤もあり、散布作業の省力化を図ることも可能である(表1)。
[普及のための参考情報]
- 普及対象:津波被災後復旧農地等のコウキヤガラ発生地域の水稲作付け農家・農業法人
- 普及予定地域:津波被災後復旧農地等のコウキヤガラが問題となっている水田地帯
- その他
- 本成果は2014年宮城県A市内の津波被災農地2地域において、2つの担い手生産法人が管理する水稲作付け圃場を中心としたのべ158筆の試験結果を基にしている。
- A・B両試験地域は砂質の強い土壌であるが比較的水もちが良いこと、A市B地区の試験圃場は一般圃と比べ1〜2週間程度移植が遅く、コウキヤガラの発生が揃った後に代かき・移植を行ったこと等も防除効果の向上に寄与したと考えられる。
- 供試した除草剤は2015年1月時点において必ずしもコウキヤガラが適用草種となっていないものもあるが、各農薬メーカーでは順次登録拡大を予定している。使用にあたっては最新の登録情報に留意する。
[具体的データ]




(宮城県古川農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 「被災水田の土壌理化学性および雑草、病害虫発生の実態と早期再生技術の開発・実証」
- 予算区分
- 先端技術展開事業
- 研究期間
- 2014年度
- 研究担当者
- 大川茂範、北川誉紘(宮城古川農試)