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水稲種子の発芽と苗質に悪影響を及ぼさない塩分濃度
[要約]
水稲種子の発芽は、浸漬溶液中のNaCl濃度が0.3%以下であれば悪影響を受けない。育苗時におけるかん水中のNaCl濃度が0.1%以下であれば苗質に影響はない。
[キーワード]
塩分濃度、水稲、種子、発芽率、苗質
[担当]
宮城県古川農業試験場・水田利用部
[代表連絡先]
電話 0229-26-5106
[区分]
東北農業・稲(稲栽培)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
東日本大震災による津波被害後、除塩対策を終了した復旧農地が除々に増加し、移植栽培を中心に営農が再開している。復旧農地では、地盤沈下や干ばつ等による塩分濃度の高い地下水を用いた種子予措や灌漑水での直播栽培等が懸念されることから、水稲種子の発芽と苗質に対する塩分濃度の影響について明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 水稲種子の発芽率は、NaCl濃度0.3%以下であれば、水稲種子の置床後7日目の発芽率は90%以上になり、NaCl濃度0.6%以上になると発芽率が低下する(図1)。
- 水稲育苗における苗質は、かん水時のNaCl濃度が0%と比較して0.1%であれば草丈に大きな差はなく、葉数と下位葉の枯上長に差は認められない(図2)。草丈に対する枯上はNaCl濃度0.4%で播種後12日頃から増加し、播種後21日には0.2%以上で差が認められることから、NaCl濃度は0.1%までが利用可能である(図3、図4)。
[成果の活用面・留意点]
- 発芽率の試験は、室内試験において「ひとめぼれ」の乾燥籾を25度C明所下の恒温器で実施した。
- 育苗試験は、「ひとめぼれ」の乾燥籾を加温出芽後に25度Cの温室内で実施した。試験に用いた苗は移植後の活着や初期生育への影響については検討していない。
- 育苗時等に用いるかん水等は事前に塩分濃度(NaClまたはEC)を測定し、生育に影響がないことを確認しておく。
- 宮城県では、除塩後に土壌ECが1.0ds/m以下の水田で水稲を栽培するように指導している(宮城県2012)。
- 移植栽培における水稲の初期生育は土壌中のNaCl濃度0.2%(EC換算値1.1ds/m)から影響を受け(齋藤ら2011)、宮城県主要奨励品種における塩害耐性は低いと報告されている(遠藤ら2013)。
[具体的データ]
(宮城県古川農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 津波被災水田に実態調査と除塩法・栽培管理技術の確立
- 予算区分
- 交付金(復興交付金)
- 研究期間
- 2011〜2013年度
- 研究担当者
- 菅野博英、浅野真澄、佐藤泰久(宮城古川農試)
- 発表論文等
- 1)宮城県古川農業試験場(2013)普及に移す技術第88号
- 2)菅野ら(2014)日作第238回講演会要旨集44
- 3)菅野(2014)日作東北支部報57:27-28