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ホウレンソウのルテイン含有量の品種間差と寒締め処理の影響
[要約]
ホウレンソウのルテイン含有量には品種間差があり、「弁天丸」はルテイン含有量が高いことに加え、寒締め処理でルテイン含有量が安定して高くなる。
[キーワード]
ホウレンソウ、ルテイン、品種間差、寒締め処理
[担当]
宮城県農業・園芸総合研究所園芸栽培部
[代表連絡先]
電話022-383-8132
[区分]
東北農業・野菜花き(野菜)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
ホウレンソウに含まれるルテインは生体内で抗酸化活性を示し、高齢者の失明原因となる網膜の加齢黄斑変性に対する予防効果が期待されていることから、ルテイン含有量をより高めたホウレンソウを機能性食品として高付加価値販売できる可能性がある。冬季に地温を8℃以下に保ちホウレンソウの根の吸水を抑制し糖度を向上させる寒締め処理には、水分含量が減少することでホウレンソウの植物体内のβ-カロテン含有量を高める効果があり、カロテノイドの一種であるルテイン含有量も同様に高まる可能性が考えられる。本研究ではホウレンソウでルテイン含有量の高い品種を明らかにし、さらに寒締め処理がルテイン含有量の向上に及ぼす影響を検討した。
[成果の内容・特徴]
- ホウレンソウのルテイン含有量は品種によって差があり、10月上旬に播種し11月中旬に収穫する秋播き栽培の作型では、収穫時の100gFW当たりのルテイン含有量は「弁天丸」が11.9mg、「冬霧7」が11.7mgと他の品種より高くなる(表1)。
- ホウレンソウを10月上旬に播種し、12月上旬からハウスサイドを開放して寒締め処理を行うことで、ハウスを締め切って保温した対照区と比較してルテインの含有量は高まり、特に「弁天丸」では寒締め処理によりルテイン含有量が安定して高くなる(表2)。
- 「弁天丸」では10月下旬に播種し1月下旬の厳寒期に寒締め処理する作型の方が、10月上旬に播種し11月中旬から寒締め処理する作型よりもルテインの含有量が高くなる(表3)。
[成果の活用面・留意点]
- 試験はパイプハウス(アーチ型 68平方メートル)内の土耕栽培で行い、燐硝安加里肥料(16-10-14)をN換算1.5kg/aで全量基肥施用した。
- 栽植密度は慣行に準じて、畝間120cmで80cm幅のベッドに条間20cm、株間10 cm(3,000株/a)としたが、「弁天丸」は寒締め栽培に広く用いられている「冬霧7」と比較して寒締め処理後も立性が強く(図1)、株間を5 cmに縮小した密植栽培(6,000株/a)も可能である。
- 気温5℃以下の条件で地温は8℃以下に安定することから、寒締め処理は日平均気温が概ね5℃以下となる時期から終日ハウスサイドを開放して行う。
[具体的データ]




(宮城県農業・園芸総合研究所)
[その他]
- 研究課題名
- 食料生産地域再生のための先端技術展開事業(先端プロ)
- 2)生体調節機能成分を活用した野菜・果実栽培技術の実証研究
- (2)宮城県野菜の抗酸化能を高める栽培法の開発(ホウレンソウ)
- 予算区分
- 受託(先端プロ)
- 研究期間
- 2012-2014年度
- 研究担当者
- 大鷲高志、加藤春男、高野岩雄
- 発表論文等
- 大鷲ら(2014)東北農業研究67:121-122