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閉鎖型苗生産システムを利用した2本仕立てトマト苗の低コスト良質苗生産方法

[要約]

閉鎖型苗生産システムを用いたトマト2本仕立て苗の生産は、50穴セルトレーが適し、2〜3葉期苗を子葉直上で摘心し子葉節2本仕立てとすると、省力的で高成苗率のセル苗生産が可能である。

[キーワード]

トマト、2本仕立て苗、閉鎖型苗生産システム、低コスト、良質苗

[担当]

山形県農業総合研究センター園芸試験場・野菜花き部

[代表連絡先]

電話0237-84-4125

[区分]

東北農業・野菜花き(野菜)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

近年、人工光育苗施設が開発され、良質なトマト苗の周年供給が可能になった。しかし、年3作〜4作を行う低段密植栽培の周年トマト生産は、長期どり栽培の5〜10倍量の苗が必要であることから、収益性の向上には種苗コストの低減化が課題である。そこで、大規模園芸施設実証により、人工光を利用した閉鎖型苗生産システムに対応した実用的な良質2本仕立て苗の生産方法を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 対象とする閉鎖型苗生産システムは、密閉室内に多段式育苗棚(生育限界が草高20cm)を備え、育苗環境を温度16〜32度C、光強度200〜250μmol m-2s-1 、CO2濃度1000〜800ppmで制御できるシステムを示す。
  2. 2本仕立て苗の生産は、成苗率、苗揃い、収量性から50穴セルトレー育苗(主枝密度 100本/セルトレー,555本/平方メートル)が適する。72穴セルトレー育苗(主枝密度142本/セルトレー,788本/平方メートル)は、過密条件から側枝の不出芽、奇形葉や心止まり等の不良苗が多く収量性も低下する(表1)。
  3. 仕立て法は、省力性から子葉直上摘心の「子葉節2本仕立て」が適する。本葉第2節上摘心の「第1節-第2節2本仕立て」は、セルトレー育苗時の作業性が劣り、また誤作業による株のロスも多くなる場合がある(表2)。
  4. 「子葉節2本仕立て」の摘心時期は、2〜3葉期(発芽確認後の積算温度260度C日程度)に行う。極幼苗期(1葉期)に摘心すると出芽不良や心止まりが多くなり苗質が低下する(図1)。
  5. 50穴セルトレー育苗2本仕立て苗(積算温度635度C日育苗事例)の生産に係る変動経費は、通常の72穴セルトレー育苗1本仕立て苗(積算温度476度C日育苗事例)より40%減少する(表3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 播種時期は、通常の1本仕立て苗より7日程度(積算温度160度C日程度)早く行う必要がある。
  2. 通常のハウス育苗では、本法に示す「子葉節2本仕立て」とすると、出芽不良や心止まり等で成苗率が低下する場合があるため、「第1節-第2節2本仕立て」による方法(平成26年度普及成果情報「トマト2本仕立てによる低コスト良質ポット苗の生産技術」)を参照すること。
  3. 本研究は,2012-2014年度復興庁・農林水産省「食料生産地域再生のための先端技術展開事業」(先端プロ)の現地実証試験で得られた成果である。

[具体的データ]

(山形県)

[その他]

研究課題名
トマト低段栽培用の良苗生産技術の確立
予算区分
受託(食料生産地域再生のための先端技術展開事業)
研究期間
2014年度
研究担当者
大木 淳、石山久悦、伊藤瑞穂(先端プロ大規模施設園芸専属研究チーム)
後藤千彩音(先端プロ大規模施設園芸専属研究チーム)