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エゾリンドウおよびササリンドウの栽培株における塊茎の発達と越冬芽の発生
[要約]
エゾリンドウでは、主塊茎の発達が停滞するとともに副塊茎の発達が旺盛となり、越冬芽は年々増加し、地下から地上まで分布する。ササリンドウでは、主塊茎と副塊茎の発達に大きな差はなく、越冬芽はあまり増加せず、地下にのみ分布する。
[キーワード]
エゾリンドウ、ササリンドウ、塊茎、越冬芽
[担当]
岩手県農業研究センター・技術部
[代表連絡先]
電話0197-68-2331
[区分]
東北農業・野菜花き(花き)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
宿根草であるリンドウは一度定植すると5年程度の採花が見込まれるが、株の生育を維持するための生理生態的知見が不足している。また、栽培リンドウの主要な植物種であるエゾリンドウ(Gentiana triflora)とササリンドウ(Gentiana scabra)の生態的な種間差も十分に明らかにされていない。そこで、両種の塊茎および越冬芽等の生態を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- エゾリンドウの地下部は以下のように推移する。
- 3年生株までは主塊茎の発達が副塊茎に優るが、それ以降主塊茎の発達が停滞するとともに副塊茎の発達が旺盛となる(表1)。
- 越冬芽の発生は地下から地上に及び、その範囲は年々拡大する(図1)。越冬芽数は年々増加する(図2)。最大越冬芽径は主塊茎、副塊茎とも2年生株で最大となり、それ以降主塊茎では顕著に衰退し、副塊茎では比較的維持される(表1)。
- 最大根径は年々増加し、細根率(全根に占める細根の割合)は年々減少する(表1)。
- ササリンドウの地下部は以下のように推移する。
- 3年生株までは主塊茎の発達が副塊茎に優るが、それ以降主塊茎と副塊茎の発達程度に大きな差はなくなる(表1)。
- 越冬芽の発生は全て地下に留まり、発生範囲はエゾリンドウより狭い(図1)。越冬芽数はエゾリンドウより少なく、株齢による増加も小さい(図2)。最大越冬芽径はエゾリンドウに比べて小さく、株齢による変化が少ない(表1)。
- 最大根径および細根率は、株齢による変化が少ない(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 両種の生態に即した株の維持技術等の開発に活用する。具体例として、平成23年度研究成果情報「エゾリンドウの主塊茎と副塊茎に着目した株の経年推移」と同様の試験を、エゾリンドウより研究事例の少ないササリンドウについて実施する際の参考とする。
- 八幡平市の生産者圃場よりリンドウ栽培株を2014年10月28日に掘り上げ、各区分4株を調査した結果である。なお、供試株には定植前にジベレリン処理、栽培中に株仕立てが行われている。
- 供試品種としてエゾリンドウは「安代の秋」1〜4年生株、ササリンドウは「安代のさわかぜ」1〜3・5〜6年生株を用いた結果であり、いずれの品種も晩生種である。
[具体的データ]



(阿部 弘)
[その他]
- 研究課題名
- リンドウの生育・生態調査
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2014年度
- 研究担当者
- 阿部 弘