- [要約]
- 平坦地域において水稲「コシヒカリ」に乳白粒が多発する主な要因は稲体の過繁茂であり、最高分げつ期葉面積指数が大きい場合、品質重視の観点からは穂肥減量あるいは穂肥施用延期が乳白粒割合の軽減に有効である。
島根県農業試験場・作物部・作物科
[連絡先]0853-22-6650
[部会名]作物生産(育種・栽培)
[専 門]栽培
[対 象]稲類
[分 類]指導
- [背景・ねらい]
- 水稲「コシヒカリ」は良食味品種として広く栽培されているが、近年一部地域において乳白粒の多発による品質低下が見られるようになり、早急な対策を講じる必要が生じた。
[成果の内容・特徴]
- 過去5年間の乳白粒の発生割合を地域別、品種別にみると、8月の最低気温の高い年に平坦地域の「コシヒカリ」に限って多発が認められている(表1)。県内の発生実態からも、品種固有でかつ、平坦地域に特有の障害と言える。
- 平坦地域における各種生育条件の「コシヒカリ」について5年間調査した結果では、乳白粒発生割合は出穂期葉面積指数(LAI)、穂数、出穂期葉緑素計(SPAD)値の生育診断指標と正の相関関係にあり、特にLAIとの相関が強い(表2)。
- 許容できる乳白粒割合を10%とすると、直線回帰式から求められる出穂時LAIの限界はは5.3となる。これより精度は劣るが、穂数426本/uあるいは出穂時SPAD値36.1も過繁茂の指標とできる(表2)。さらに、LAI及び茎数(穂数)については最高分げつ期の値と出穂時の値との相関が高いので、これらも過繁茂の一応の指標とできる。
- 最高分げつ期の生育量が大きい場合の対策として穂肥の減量あるいは施用延期が考えられ、これらの処理によって乳白粒割合を減少できる。ただし、わずかに収量の低下が伴う可能性がある(表3)。
- 乳白粒多発の防止対策は過繁茂にしないことと考えられるが、登熟期間の高温が予測されるにもかかわらず、最高分げつ期においてLAI 2.7(または最高茎数582本/u)以上となった場合の事後対策として、収量より品質を重視する立場に立てば、穂肥の減量あるは施用延期が有効である。
[成果の活用面・留意点]
- 夏期高温の年における平坦地域産米の品質向上に寄与できる。
[その他]
研究課題名:良質米安定生産のための水稲生育制御技術体系の確立
予算区分 :県単
研究期間 :平成4〜8年度(平成4〜12年)
研究担当者:安原宏宣
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