- [要約]
- 乾田直播栽培における播種後〜幼苗期の雀害回避対策として、種籾のチウラム水和剤処理が有効であり、顕著な効果が期待できる。
岡山県立農業試験場・作物部
[連絡先]08695-5-0271
[部会名]総合研究、作物生産(夏作物)
[専 門]作物虫害
[対 象]稲類
[分 類]指導
- [背景・ねらい]
- 乾田直播栽培では、標準的な播種期よりも早播きあるいは晩播きをすると、播種した籾の食害や幼苗の引抜きなど顕著な雀害を被ることがある。そこで、ビール大麦跡の乾田直播栽培における苗立安定化のため、チウラム水和剤による雀害回避の可能性を検討した。
[成果の内容・特徴]
- チウラム水和剤10倍液への種籾浸漬処理は、野外におけるスズメの喫食に対して極めて高い忌避効果がある(表1、2)。また、ケージ内試験においては顕著な喫食の抑制が認められる(表3)。ただし、他に餌がある場合でもわずかづつは喫食される。
- この処理は、出芽後の胚乳の喫食に対しても高い忌避効果がある(表4)。しかし、喫食の抑制は籾の場合より劣る。また、幼苗の引抜き自体は防止できない。
- 酸化第二鉄の粉衣は一時的な忌避効果があるものの、野外で無処理の籾が減少した場合、あるいはケージ内で他に餌ない場合は顕著に喫食される。
- スズメはビール大麦や小麦種子より籾(無処理)に対する嗜好性が高い。ビール大麦は吸水して膨軟な状態となれば顕著に喫食されるが、乾燥した状態では酸化第二鉄を粉衣した籾より喫食され難く、チウラム水和剤を処理した籾より喫食され易い(表2)。
- これらのことから、種籾のチウラム水和剤処理は乾田直播栽培における播種後〜幼苗期の雀害回避対策として高い効果が期待される。一方酸化第二鉄の粉衣処理は、ビール大麦跡の直播栽培においては、その嗜好性から忌避効果を期待し得ない。
[成果の活用面・留意点]
- 麦跡の乾田直播栽培では、周辺圃場の湛水に伴って雀害が集中する。また、不耕起溝切条播は、全耕点播栽培より出芽前の食害が多い傾向である。
- チウラム水和剤の処理による薬害や苗立率の低下は認められない。
- 3月中旬にチウラム水和剤を処理した場合、6月中旬までは種籾を貯蔵可能である。浸漬後、薬液の水切りと籾の風乾にやや手間を要するので、処理は早めに行う。
- 本試験では、播種籾と飛散粒を識別するためチウラム水和剤処理にも酸化第二鉄を添加しているが、上記の効果は主にチウラム水和剤によるものと考えられる。
[その他]
研究課題名:乾田不耕起直播を中心とした超省力・低コスト稲作技術体系の開発
予算区分 :地域基幹農業技術体系実用化研究
研究期間 :平成8年(平成6〜8年)
研究担当者:杉本真一
発表論文等:なし
目次へ戻る