玄米 1粒中タンパク質の迅速非破壊分析法の開発


[要約]
近赤外分析法を用いて、非破壊で玄米 1粒中のタンパク質を迅速に測定できる手法を開発した。分析精度は標準誤差SEP=5.6mg/gである。
 兵庫県立中央農業技術センター・農業試験場・作物部
[連絡先]0790-47-1117
[部会名]生物生産、流通利用
[専 門]育種、栽培
[対 象]稲類
[分 類]研究

[背景・ねらい]
 米中のタンパク質含有率が食味に与える要因の一つである。化学分析では多くの時間と労力を要することから、育種初期世代の選抜に使用できる方法として、玄米 1粒を非破壊で分析できる近赤外分析法の開発を試みた。

[成果の内容・特徴]

  1. 走査型反射式近赤外分光光度計と 1粒カッブを用いて、比較的低波長域にあたる 800〜1,500 nm の 6波長の原スペクトルから選択し、R=0.93、標準誤差(SEC) 4.6mg/gの検量線を作成した(表1)。タンパク質含有率の実測値には、NCコーダの窒素測定値にタンパク質換算係数5.95を乗じた値を用いた。
  2. タンパク質含有率が 56〜109 mg/gの範囲の未知試料30検体では、r=0.90、標準誤差(SEP) 5.6mg/gで比較的よく適合する(図1)
  3. 走査型反射式近赤外分光光度計(インフラライザー500型)での測定時間は 1検体 23.3秒で、先に開発した2次微分の検量線の約1/3の所要時間である(表2)。測定が迅速に行えるため、多数のサンプルの分析が可能である。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本検量線は、化学分析や従来の粉末試料を用いた近赤外分析に比べると精度が劣るため、タンパク質の定量分析には不適である。
  2. 玄米粒を非破壊で測定するため、分析試料をそのまま次世代の育成に使用できる。

[その他]
 研究課題名:育種初期世代における酒造適性評価と遺伝特性解明によるスーパー酒米の育成
 予算区分  :県単経常
 研究期間  :平成8年度(平成 6〜 8年)
 研究担当者:澤田富雄、田中萬紀穂
 発表論文等:澤田富雄他 4名:近赤外分光法による玄米成分非破壊分析、土肥講演要旨39、79、1993.
            澤田富雄他 1名:玄米粒の近赤外スペクトルによる米の品質評価、第2回近赤外研究会講演要旨集、7-10、1993.
            澤田富雄他 2名:近赤外分光法による玄米中タンパク質の1粒非破壊分析、土肥誌67、304-306、1996.
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